4話 ---侍女A結---
「ラーヤ。ここの4人を僕の専属にすることに何か問題はある?」
坊ちゃまがいきなりこんなことを言われた。
どうやら坊ちゃまは、周りを専属で固めたいらしい。あぁ、憧れの『専属』。
「ヒロ様のお世話を、専属で固めるには、侍女はあと一人は欲しいところですね。侍従も2人体制である必要があります。」
バーバラーヤ様がこの人数では難しい事を告げられます。
「部屋付き侍女が専属になる」ということは「雑事に呼ばれなくなる」と同時に「部屋に手が足らなくても応援が呼べない」事を意味します。
緊急時には応援が頼めないことはないのですが、普段から手が足りないようでは困ってしまいます。
う~ん、誰か巻き込めないかな。ここにいる先輩方以外に親しい侍女はいないし。
あっ!侍従君が手を挙げたぞ。主に発言を求めるなんて、よほど高位の使用人にしか許されないことだぞ。不敬罪だぞ。
って、坊ちゃま許しちゃってるヨ。
えっ、兄貴の売り込み?そんなのあり?
なら、妹はまだ見習いだけど、専属にしてもらえないかな?それで、人数的には足りるんだけど。
でも自分からの発言、怖いな。
「ほかに推薦等、ないですか?」
坊ちゃまが聞いてるヨ。
ええい、ままよ! 一念発起して手を挙げる。やっぱり怖いから恐る恐るです。
「どうぞ」
「あのぉ、アリスルート・レインと言います。専属のお話、大変うれしく思います。出来ましたら、今見習い中の妹も、専属にしていただけたら……」
『侍女矜持』にあるまじき言動……に恐怖がピークに…あわわわわ。
「っ。誠に不躾な件!失礼しました!。今の言!取り消しますッ!忘れましゅ!」
必死に弁明するが噛んでしまう。
あぁ。はかない人生でした。これで首確定ですね。イリス。ふがいない姉でごめんなさい。
「妹さんも専属にするのは構いませんが、ラーヤ。問題は?」
「見習いは専属にすることはできませんが、こちらで引き取る事は可能です。残りの期間は私が面倒を見ます。専属予定として御当主様に話を通しておけば大丈夫と思います。」
えっ?
OK?
あっけにとられていると
「ということです。アリスルート。聞きましたか?」
坊ちゃまの言に慌てて
「あ、ありがとうございましゅ!」
また噛んでしまった。
坊ちゃまは笑っていた。寛大な坊ちゃまが天使に見えます。
イリスの残り見習い期間は、バーバラーヤ様指導?
バーバラーヤ様の指導は死ぬほど厳しい事で侍女仲間では有名です。
イリスよ、貴女の死は決して無駄にはしません。




