8話 ---課題達成---
現場に到着すると、まさに戦闘が始まる直前だ。
『ゴブリキ』の初見の感想は、マジョーラヘルメットをかぶったゴブリンだ。
『幼児ぐらい』としていたが僕の2倍はあるぞ。
手に得物は持っていないが爪は長く、それだけで切れそうだ。
腰にはベルトが巻いてありそれで腰布を押さえていた。
図鑑挿絵とは『なんか違う』
もしかして聞伝だけで絵をかいていないか?
「ヒロ様。ハル様。2匹まで数を減らしますのでしばしお待ちください。全員戦闘開始!」
オル兄さんの号令で戦闘が始まる。
騎士21名で取り囲んでの殲滅戦だ。
愛称ではあるが『様』呼びなのは、今の僕らの立場が『訓練仲間』ではなく『護衛対象』だからだ。
ほぼ戦闘が終わり、残すは2匹となった。
騎士達で取り囲まれ逃げられない状態だ。
「ヒロ様。ハル様。腰を一刀の元に切ってください。それ以外ですと危険な状態となります。」
オル兄さんからの指示で、ハルは、1匹に狙いを定め、切りかかっていく。
僕も、もう一匹へ狙いを定め、『縮地』と念じると、一瞬でゴブリキに接敵した。
僕は、速度強化術奥義に『縮地』とコマンド名をつけて活用している。
必要な工程をあらかじめルーチン化して名前を付けておくと、発動が楽なのだ。
腰のあたりに見える『魔力溜り』目掛け剣を振るう。
再び『縮地』で元の位置に戻る。
腰を切断されたゴブリキはその場で崩れ落る。
ハルの方を見ると、こちらもゴブリキを切った所だ。
ゴブリキの上半身が落ちる。
この時点で失敗していれば、すぐさま騎士団員がフォローに入るところだが、僕と同じ個所で切られており何の問題もない。
…
…
何かおかしい。頭の中で警鐘がなっている。
[クロックアップ・レベル1]
速度強化術最終奥義に付けたコマンド名だ。
これで、思考及び動作が10倍に加速される。
10倍に引き延ばされた時間流の中、警鐘の原因を探る。
ゴブリキの魔力溜りが股間部あたりに移動している。つまりこのゴブリキ腰はまだ『生きている』
ここからさらに動き出そうとしている。
[レベル2]100倍加速。
腰のベルトが解ける。多節棍? いや これは脚だ。
これでハルを抱え込もうとする。
腰布が取れ、一物がそそり立つ。
あれが差し込まれたが最後、体液を注入され廃人となってしまう。(魔獣図鑑より)
オル兄さんが気が付いたがもう遅い。
間に合わない!
[レベル3]
1000倍加速だ。
ゴブリキ腰に接敵し魔力を強制注入、魔力溜りを僕の魔力で包み込む。
それを魔力溜りごと強制的に外に引きずり出す。 魔力版、「地獄&天国」だ。
魔力を空中に霧散させ、僕は元の立ち位置に戻る。
[クロックオーバー]
クロックアップ解除コマンドで元の時間流へと戻ってくる。
ゴブリキ腰はその場で停止しその後、崩れ落ちる。
騎士団員みんなの歓声のの中、オル兄さんだけはホッとしている。
僕がやったことなど誰も見えていない。…はずだ。




