5話 ---顛末纏末---
「『殿下は当家の近くを散策中、休憩を所望されてそれをフィロルウェインがもてなした。』
『殿下はその『もてなしの心』に感動され。フィロルウェインと友誼を交わされた。』
『花が愛でたいと申されたのでお茶会に案内した』
こんなところでしょうか?」
「最初と全然変わってないではないですか。」
「これ以上どう説明しろと?」
「あらましは判りました。妾の方で抜粋して皆に報告します。
して、どのようにもてなしたのです。妾も、もてなされてみたいのですが」
「それは少々難しいかと思います。」
『貴婦人が床に直接座ることははしたない事』となっている。
生活文化が違うのだからしょうがない事だが。
ちなみに成人前ならそこは大目に見てくれる。
さらに貴婦人以外にはそこに忌避はない。
「床に座る勇気がおありですか?」
「ななななななななななな」
義母が真赤だ。
もう一つ。隠語で
『床に座る』=『お手つきになる』
という物がある。
これは貴婦人同士の間でしか通じない。(ラーヤが教えてくれた)
どうやら義母はこっちでとらえたようだ。
「異なる文化で発達した作法ですので『はしたない』『野蛮だ』ととられる場合もありましょうが、このもてなしの真髄は、俗世の地位とは関係なく同じ床に座り、主とその客というシンプルな関係となるという物。
僕も同じ床の上に座りますし、ラーヤかアリスを同席させましょうか。体験なされますか?」
「そ、そうですわね。む、義息子相手に、な、なにうろたえてるんでしょうね。わ、わかりましたわ。お受け致しましょう。」
「『床』を『床』にしてみたら何か妖しく見えない?」
「ヒロ様。そういう話はお手つきの相手にしてください。」




