10話 ---忍込殿下---
「それではルル兄。行きましょうか。」
「行くって、どこへだ?」
「お茶会会場へですよ。」
単なる『我儘王子』ではなかったようだ。
ちゃんと話が分かるお方ではないですか。
「乱入されたくなかったのではないか?」
「乱入はいけませんが、挨拶ぐらいはいいでしょう。もう終盤でしょうし。それに王族が訪ねてきているのにその場にいる貴族一同が顔を出さなければ、逆に大問題になってしまいます。」
「そういうものか?」
「一度『貴族礼儀手引書』呼んでみて下さい。貴族同士の付き合い方が解るはずです。それに王族独自の儀礼、礼儀もあるでしょう。覚えておかないと王になった時大変ですよ。」
「我は継承権は低いのだが。」
「それでもです。成人すれば陛下の代わりに公務に出る事になるのでしょう。そんな時に王としての立ち振る舞いを知っていなければ、陛下の評判、落ちちゃいますよ。」
「勉強は苦手なのだ。」
伝家の宝刀。出しますか。
「…ルル兄。礼儀をわきまえた男は『かっこよく』て『モテます』よ♡」
「『かっこよく』て『モテる』か。頑張ってみようか。」
この王子様。割とちょろい?
「なんだ?この暗幕に包まれた東屋は?」
「丁度、『星空茶会』終盤ですね。ルル兄。この暗幕の隙間からそっとどうぞ。いいですか、お手つきは絶対ダメですからね。
『イエス令嬢 ノーお手つき』
です。」
「なんだその標語みたいなのは。解っておるわ。」




