8話 ---開襟対話---
「…正直に言おう。今日、成人前の娘が茶会を開くと聞いてこちらに参ったのだ。混ぜてもらおうと思っての。」
「こちらも正直に言いますと、それを阻止しようと思いまして、この席を用意しました。」
「ホントに正直だな。我の前なら取り繕ってもよいものであろうに」
「それも今更でしょう。」
「しかしなぜに我を拒む。我が出れば茶会も拍が付くであろうに。」
「殿下。殿下が密かな楽しみをなされている場に、皇后陛下が乱入してきたらどう思われます?」
密かな楽しみ…何があるであろう?…春画を見ている最中…
「き…気まずいな。」
「何を思い浮かべられたかは詮索しませんが、楽しんでいる余裕なんてなくなるでしょう。
今、義母は招待客を楽しませ、楽しんでいるのです。そんな場に殿下が乱入されるとお茶会どころではなくなります。」
「そうなる…か。」
「それにあの場には僕にとって大事な御姉様の一人が参加しています。その娘を殿下の毒g…お手付きにされたくないのです。」
「其方、『毒牙』と言おうとしたか?」
「空耳でしょう。」
「とぼけおって。」
我にはコヤツの様に、本音をぶつけてくれるものは居なかったな。
コヤツがたしなめてくれれば、我も『我儘王子』などと陰口をたたかれなくなるか。
何よりコヤツとの会話は楽しい。
「フィロルウェインよ。我の友となれ!」
「断る!」
なななななななななななっ!
「いいですか、殿下。友達になって欲しいがために命令はないでしょう。友達というのは対等な立場です。王子である以上、対等は難しいとは思いますがそれでも歩み寄る姿勢は必要です。」
そうであった、我は対等な友が欲しいのであったな。
「フィロルウェインよ。我の友となってはくれぬか?」
「喜んで!」
これが正解だったようだな。
「友となったからには僕の事は『ヒロ』とお呼びください。」
「『ヒロ』とな?」
「はい。『フィロルウェイン』⇒『フィロ』⇒『ヒロ』です。」
「そうなると我も呼び名を考えねばな。」
我の愛称は何だった。幼き頃どう呼ばれていた?
「『ルル』。これから我の事を『ルル』と呼んでくれ。ヒロよ。」
「断る!」
なななななななななななっ!なぜに!
「年上の友を呼び捨てになんてできません。ここは親愛の情を込めて『ルル兄』と呼ばせてもらいます。」
ハッ、ハハハッ、ハハハハハハハハハ。
「うむ。よろしく頼む。ヒロよ。」
「はい。ルル兄。」
「これからしょっちゅう遊びに来るぞ。ヒロよ。」
「ルル兄。それは構いませんが…僕の鍛錬にかち合うと『無敗将軍の地獄の30分間肉体クッキング』行きになりますよ。」
「…それは…遠慮したいかな。」




