7話 ---怪童対峙---
「其方のおもてなし。しかと受け取った。して、聞いてよいかな?フィロルウェインよ。」
「何でございましょう。」
「我は東側で貴婦人のお茶会があると聞いていたのだが、それは間違いか?」
「はて? 私は、静かな東屋に殿下をおもてなしする席を設けると申し上げてましたが。」
「それはこことは反対側でないのか?」
「場所はともかく、当方が殿下のために設けた席に殿下が訪ねて来られた。それが事実でございましょう。」
詭弁とも取れるが、事実だ。反論は出来ぬ。
…
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「実を言いますと、私、西と東を勘違いしておりましてレイモン殿に方角を逆にお伝えしてしまったのでございます。正面からいらして頂いていればこの旨、伝えるように言っていたのですが、どの者の案内でこちらへいらしたのでしょうか?」
「…そんな者はいない。直接、ここへ参ったのだ。」
これは失態だ。王族だからと言って、案内されず他家に入り込んではいけないのだった。
周りが何も言わぬので忘れておったことだ。
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「不敬を承知で殿下に問いまする。いかな用件で当家を訪れられましたか?」
この者、幼いながらも覇気を扱うか?
王族に覇気を向けるなど無礼であろうが!
…
「其方。無礼打ちにされたいか?」
「私が簡単に切られるとお思いですか? 洗礼前なれど『無敗将軍』の手ほどきを受けた『炎突のリアス』の息子を」
…
…
ハッタリではなさそうだの。
「…我の負けだ。其方も覇気を収めよ。」
「えっ?僕、覇気出してました?」
覇気が霧散した。コヤツ、無自覚でやっておったのか?
「それか地か。十分出ておったぞ。現にトマーシュが固まっておる。」
「僕で固まってるようじゃ、父や師匠の覇気だと気絶しちゃいますね。」
「そんなにか。しかしそれを言う其方は覇気を浴びても平気なのか?」
「はい。それよりも怖いものを知っていますので。」
…
…
…
「それは聞かない方が良い事か?」
「御意に。」
「ちょっと良いかヒロ。」
「あっ師匠。師匠もこちらで茶でもいかがです。」
「今日は遠慮しとくかの。それよりもそこで固まっているトマ坊を借りてってもいいかの?ヒロごときにビビっているようじゃと相当腕が鈍っておるとみえる。鍛えなおそうと思うての。」
「よろしいですか殿下。」
「わかった。よろしく頼む『無敗将軍』」
「承りました。殿下。」




