6話 ---茶道接待---
「こちらは東の異国での茶をたしなむ部屋『茶室』を再現したものにございます。この部屋としての作法は土足厳禁にございます。ささっ、どうぞ靴を脱いでおあがり下さい。」
何とも珍妙なつくりだが、妙に落ち着く空間だ。
とりあえず従っておくか。
「上がったぞ。しかし椅子がないようだが。」
「この部屋では床の上にクッションを敷きその上に座るものにございます。座り方にも作法はございますが、基本はお客様に寛いでいただくことですので楽な姿勢でお座りください。」
「フィロルウェインよ、聞きたいこ…」
「少々お待ちを、まずはおもてなしをさせてください。お話はその後にお願いします。」
〈シャカシャカシャカ〉
なんか妙ちきりんなもので混ぜておるな。
「『抹茶』にございます。少々苦いのでこちらの茶菓子と交互にお召し上がりください。」
緑色の液体?泡立って居る。毒ではないのか?
「当家主導で売りに出しているキャルフィーもそうですが、苦み渋みは大人の男の味にございます。」
こやつ、我を試しておるのか?
「殿下。まずは私が毒見を。」
「いや、不要だ。こやつ、我を試しておる。試されて引き下がるようでは王族の名折れ」
「試すなんてとんでもない。私なりのおもてなしです。レイモン殿の茶も点ちました。さっ、ご遠慮なく。」
まずは茶を一口…「苦」
菓子だ菓子…「甘」
茶だ「苦」
…
…
最初は苦くて飲めたものでないと思っておったが…意外といけるぞ。
トマーシュは…
菓子に夢中になって、役には立たぬな。




