4話 ---偽令嬢装---
先日、ヒロ様の義母上様がお茶会のご相談に来られました。
また、貴公子給仕のご依頼でしょうか。
「セレスちゃんを妾の傍に侍らしたいのですが、貸してもらえぬかや?」
「アイスを作るのに絶対に必要な人員なので当日、表に出るのは無理です。」
どうやら可愛い娘自慢のためにセレスちゃんを借りたいそうです。
私だって可愛いを自負していますが、来年には成人です。
大人の魅力爆発[させる予定]です。
『可愛い』はもう卒業[する予定]です。
「そうですね。フィロルウェインや。ドレスを着てみる気はないかや?」
うん、ヒロ様ならウィッグ付けて着飾れば立派な小さな御令嬢に…
「ぜ・ん・りょ・く・で・拒否します。」
いいとおもうんだけどなぁ~。
「バーバラーヤや。だれか娘を紹介してくれぬかや?」
「…アリスルートなら適任かと存じます。」
…
…
…
えっ?
私?
「ベティは成人していますし、ガーリィは今年成人です。成人前だと貴女かイリスということになりますが、イリスだと失敗することが目に見えてしまいます。
その点あなたなら安心です。常に主の動きに気を配れているということは、主の動作を理解しているということ。今回はその逆をすればいいのです。
これは貴方への試験と同時に新しい勉強の機会です。一度、仕えられる立場というものを経験してみなさい。そうすれば今まで見えていなかった部分も見えてくるはずです。」
「アリス。これは夢に見た『御姫様』気分を味わえるまたとない機会です。これは命令です。命令するからにはすべての責任は僕にあります。気兼ねなく存分に楽しんでくるように。」
そんなこと言われても楽しめません。それになんで、ヒロ様が私の夢、知ってるの~~~。
[へぇ~。ドレスってこんなに重かったんだ。]
とりあえず現実逃避です。
重さはもちろん知ってましたよ。
でも、持つのと着るのは大違い。
これで優雅に動けるかな~。
「アリスちゃん。今日はよろしくね♡」
「は、はい。アマリお…御姉様」
そう。
私はアマリ御姉様の親戚の令嬢アリスルート=レインです。
お上品なお嬢様なのです。
…
…
…
ってなれるか~~~!
こうなったらヤケだ。ヒロ様が女の子だった場合を趣味レートして演じてやるぅ。
切れた女の子は怖いのですよ。
「アリス。『趣味レート』とは何です。」
「ラーヤ様。『もしヒロ様が○○だった場合』のヒロ様の行動を想像する事です。」
「それって、アリスの趣味なのですか?」
「はい、趣味ではありますが、ヒロ様の行動などを予測するに役に立ってます。」
「イメージトレーニングのようなものなのですね。仕事に役に立っているのなら何よりです。で、今のアリスの一押しは何ですか」
「『ヒロ様がお姫様だった場合』ですね。こんな場合どんな事を言われるか。どんなドレスが可愛いか想像してます。」
「ちなみにどんなドレスです?私でしたらこんなドレスがいいと思うのですけど。」
「ラーヤ様。こっちのなんかも捨てがたいです。」
「それなら、これなんかどうでしょう。」
「この色も素敵…」
「ラーヤが寝不足なんて珍しい。何かありましたか?」
「御心配おかけして申し訳ありません、ヒロ様。昨晩、アリスへの侍女指導に熱が入りまして遅くまで指導をしていたのでございます。」
「仕事熱心、指導熱心なのは解りますが、体は労わってくださいね。剣の修練中にアリスと仮眠を取っておきなさい。これは命令です。」
「あっ、ありがとうございます。」[キャー、夜更かしの本当の理由なんて、言えないわ~!]
二人して昨晩、何していたんだ?




