6話 ---最終奥義---
「ヒロよ。儂ゃあきれてモノも言えぬわ。出来んかったんじゃなかったかの?」
「緑魔力だと無理だったんで白魔力を使ってみたんですよ。流石に空気抵抗は無視できないんで緑魔力は纏いましたが。」
師匠はあきれ顔だ。
「ヒロ兄すごぉーい。ボクもやってみたい」
止めておきなさい。体がバラバラになります。
いや。体の耐えうるスピードまでデチューンすれば可能か? 後で考えてみよう。
「こうなったら最後まで見せるしかないのぅ。誰か、案山子と真剣を持ってきてくれ。」
何が始まるんだ?
「速度強化術最終奥義じゃ。一瞬で済む。というより一瞬で済ませなければ廃人になるという危険な代物じゃ。案山子は100シャックンほど向こうに置いてくれ。」
ファンタジーでよくある『エアスラッシュ』系の技でも見せてくれるのだろうか?
「よく見ておれ。一瞬じゃ。」
師匠の頭が輝いた!
別に師匠は禿ではない。フサフサです。
緑魔力を全身にみなぎらせ、それ以上に脳、いや、神経系に集中させているのです。
目の前の師匠が掻き消えた瞬間、案山子の周りにそれぞれ違うポーズの師匠が3人。
案山子がバラバラになると同時に、師匠は一人に戻った。
「時の流れを止める術じゃ。この止まった時の中だと速度強化奥義でないと動くことが出来ぬ。」
おおっ。なるほど、ザ・●ールドだ。
これは、視点と認識の違いだ。
『時の流れを止める』ではなく、実際は魔力で『脳内処理速度を上げている』
実際時間は一瞬なのでほぼ『止まった』状態と言えるだろう。
『俺』の事故時に感じた状態を魔力で意図的に発生させているということだ。
「これを習った当初に『3撃まで』と厳命を受けておる。若いころ調子に乗って、5撃入れようとして頭痛に見舞われ、数日寝込んだことがあったのじゃ。」
脳を無理やりクロックアップさせているのだ。時間が長引くとオーバーヒートを起こす。
そう、『無理やり』だとアウトだ。
「案山子をもう一体お願いします。」
「やってみるつもりか?」
師匠の時の80%の魔力を頭に巡らし最終奥義を始動。
止まった(様な)時の中、移動。
速いが何とかついていけるスピードだ。
1撃、移動、2撃目、移動、3撃目、まだいけるか?
いや、今はこのくらいにしておこう。これ以上やったら師匠を怒らすだけだ。
今、師匠がorz
「わかっておったよ。ヒロならできると。わかって…ハハハハハ」
師匠。帰ってきてください。




