4話 ---卵乳蒸菓---
「ラーヤ。卵と乳を混ぜて蒸したデザートって、知ってる?」
「さあ?パイ生地ベースの焼き料理なら存じますが。」
異世界もの定番。異文化混入である。
弟を迎えるにあたり、こちらにないデザートで懐柔。
の気もないではないが、本心は単に、おいしいものを弟に食べさせてあげたいのである。(自分も食べたいのである。)
「卵と乳、砂糖を用意できる? あと冷やすための水か氷。厨房の使用許可も。作業台と竈1つあればいいんですが。」
バニラビーンズも欲しいところだが、こっちの言葉でどう言うのだろう? なくてもおいしくできるが…
「食材はご用意できます。冷やすのには氷室があります。
ですが厨房の使用許可とは?
ヒロ様自身でおつくりになられるのですか?
それは許可できません。厨房長に作り方を指示してください。」
やっぱり厨房には入れないか。
「ラーヤ。僕は新しいデザートを作ろうとしている。新しいものは貴族にとって『商品』であり『武器』でもある。
だから極力、作り方を他の人には知られたくないんだ。それに明日来るファルシオンに兄の手作りの物を食べさせてあげたいんだ。」
目を潤ませて『どうするアイ○ル』発動。が、
「やはり許可できません。ヒロ様を厨房に入れるなど、御当主様に叱られてしまいます。」
うーん困った。小鍋1つ分でも湯沸かし出来ればいいんだが…
「ですが、侍女の控え室ならば許可できます。そこでしたら小さいですが作業台もありますし、茶用の湯沸かしもございます。」
「決定です。さっそっく視に行きましょう。」
しばらくは『プリン』のターンです。