1話 ---空気抵抗---
「かなり体力もついた様じゃの。速度強化術をしてみるか。」
強化術も次の段階に入りました。
「まずは手本じゃ。エルレン。ちょっと手伝え」
と言って師匠は全身緑の魔力を纏いエル姉さんと模擬戦を始めた。
エル姉さんは今のところ剣で受けれている。
「ちょっと子供だましをしてみるかの」
エル姉さんの剣が追い付かなくなり、全身防御も使わざるを得なくなっている。
師匠の見た目のスピードは変わっていないのだが…
「儂では土属性の相手にしか使えん技で、あんまり多用していると利かなくなるがのぅ。」
模擬戦を終えて、
「基本、というよりこれが速度強化術のあらましじゃ。ヒロは何かわかったかの?」
やっぱり丸投げですか?
「まず、緑の魔力で空気抵抗を無くしていますね。」
「『空気』とは何じゃ。」
「『空気』は今この場に満ち溢れている見えない『物』です。この『空気』の移動が『風』という現象です。」
「『風』は物ではなく現象なのか?」
「そうです。師匠は走っている時なんか、風を感じませんか。」
「あるのう。」
「その時、実際には風は吹いていません。『空気』の中を移動することで、『空気』が移動するのと同じ現象が師匠に起きているのです。」
「ほほう。」
「と話がはみ出ましたが、普通に体を動かすだけでも微弱ながら『空気』の抵抗を受けているものなのです。
で、この抵抗ですがスピードの倍々で増えていくものと考えてみてください。
今、剣を振るうのに、速度強化を使う場合と使わない場合でどれだけ違いがありますか?」
まず強化術使用時(無音)
強化術を切った場合〈ビュン〉
「かなり違うのう」
「この『空気抵抗ゼロ』による損失無しの剣速、移動速が速度強化術の正体です。」




