4話 ---氷菓評価---
「で?なんでこの工房に義母上がいるんです。」
いくら試食時に、僕と同じテーブルに座ることに抵抗のなくなった専属でも、義母上だと遠慮しちゃうでしょうが!
それに先触れもなく部屋を訪れるのはマナー違反でしょう。
「固い事は言いっこ無しです。ここには『公爵夫人』なぞおらぬ。ただの甘味好きの婦人が迷い込んだだけの事。ささっ。皆の者、遠慮せずに座ってたもれ。」
「『不敬だ』と言って僕の専属の首を飛ばさないでくださいよ。
義母上もこう言ってますので、皆席について下さい。ハルは僕の隣ね。」
ラーヤとセレス以外はちょっとビビってるな。
セレスはあれか?『ヒロ君のお母さんが来た』って感覚か?
「フム。其方が新しく入ったセレスかえ? …妾の事は『アマリ姉様』とでも呼んでくれぬかや?」
う~。ラーヤですら『姉様』呼びされていないのに、1児の母が何たる暴言!
「ア…アマリ姉様?」
「……キャー!これよこれ!新しい感覚だわ。バッヘン侯爵夫人にはしてやられたけど、今度のお茶会はこの方針で行こうかしら。若い娘が居る家はレーセル家でしょ。それから…」
「…えーと…」[どうしよう。]
「セレス。いつもの事です。気にしないように。」
お茶会の新しい企画が浮かんだようですね。ソレハナニヨリデス。
「皆に行き渡りましたね。融けないうちにいただきましょう。それでは」
「「「「「「「「「「「いただきま~す」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「つめた~い!」」」」」」」」」」」
「でも美味しい。」
「甘~い。」
「ドレープ入りは後味がさわやか。」
「痛てててて。頭がキーンって」
イリスはお約束ですね。
「理由はよくわかってませんが、氷菓子を一気に掻き込むと頭がキーンと痛くなりますから注意するように。」
「だからなんでヒロ様は、それを先に行ってくれないんですか~。」
注意力の無いイリスの自業自得です。
「ねねねねっ!このレシピ!妾にくれないかな?どうかな?う~んこの冷たさ!たまんないわ~♡!ねねね!このお菓子なんていうの?」
まだ義母上は壊れている。
「クリームベースの物を『アイスクリーム』、ドレープ入りを『ドレープジェラート』と言います。僕の専属達が一丸となって初めてできる物なのでレシピとしては渡せない物なのですよ。」
「…それは残念ですわ。しかし、この冷たさ。氷室の氷では無理であろう。ラーヤは氷魔法、使えたかや?」
義母上が『戻って』来た。
「一部種明かしをすると、氷に塩をかけると一時的に氷より冷たくなるのです。その分、早く氷は融けますが。其の冷たさをみんなの魔法で集めたものなのです。」
「そうなると、そう毎回は作れぬか。毎日食べたい所ですが…。夏の間に2度ほど茶会を開く。その時に用意出来ぬかや?」
「解りました。」
「来年は氷菓専用の氷室を作るかのう。」




