1話 ---見習紹介---
「セレスティーナ=チャンドルといいます。このたび見習いとしてこの部屋に務めることとなりました。専属の皆さんは素敵なお兄様、お姉様と聞いています。どうかご指導のほど、よろしくお願いします。」
おばちゃんの入れ知恵か?僕は専属をそんな風に紹介した覚えはないぞ。
イリスは侍女に昇格しました。まだ部屋付きですが。
「やったー!後輩ができた!」と喜んでいるが…そんなんじゃ、すぐ追い越されますよ。セレスは出来がよさそうですから。
「セレスは見習いですが、専属として扱います。ゆえにこの部屋で見聞きしたものは他言無用に願います。
彼女をうちで引き取った理由については、彼女の親が父上と知り合いだったこともありますが、もう一つには彼女の魔法特性にあります。
彼女は火属性になりますが、火のように温めるのではなく、逆に冷やすことができます。
彼女の魔力鍛錬次第になりますが、これで新たなお菓子が作れるようになりますから期待しておいてください。それでは皆さんも自己紹介をお願いします。」
彼女はすぐに打ち解けたようだ。
みんなの事を『xx兄様』『xx姉様』と呼んでいる。(どこのお嬢様だ!)
新鮮な呼び名でみんな感動しているよ。
これで指導が甘くならなきゃいいけど。
アリスも何で感動しているんだ?妹がいるから呼ばれなれているだろ?
「ヒロ様。今まで『お姉ちゃん』だったものが『姉様』と呼ばれたんですよ。なんかお上品になった気分です。」
ラーヤへの呼び名は、やはり「ラーヤ様」だった。
魔力が見えるせいなのか、僕にはラーヤの感情が解る。『見える』といった方がいいか。
見た目『完璧侍女』であるが内心は[姉様って呼んで欲しかった]
夜の魔力マッサージの時に『ラーヤ御姉様』って呼んであげようか。
どんな顔をするかな?
「どうです?気持ちいいですか『ラーヤ御姉様♡』」
ラーヤは顔を真っ赤にして
「大人をからかうものではありません。ヒロ様!」
[キャー『御姉様♡』だって。ヒロ君から言われちゃった♡。新鮮でいい響きね。うん。今日は『御姉様』記念日にするわよ。日記に書いとかなきゃ。]
…心の声が『義母上』化していた。




