8話 ---鶏象魔肉---
早いだけあって、食肉区画も、まだまだ品数豊富だ。
「さーてお立合い!今入荷したての『チキン』と『ビフ』肉だよ!」
やっぱりあったか『チキン』と…『ビフ』?
「おじちゃん『チキン』と『ビフ』って何?」
「誰かと思えばこの前の小さな坊ちゃんかい。良くぞ聞いてくれました。
『チキン』というのは大きな鶏のような魔獣さ。身の丈15シャックン(約2.6m)。羽はあるが顔や足、尻尾には鱗が付いていてそこらの剣じゃびくともしない。羽があっても飛べやしないが、腿の筋肉が発達していてここが美味いって代物さ。
『ビフ』というのはここより北の雪国に居る、身の丈20シャックン(約3.6m)全身毛むくじゃらの四つ足巨獣だよ。鼻はゾウより長く15シャックンもあり、牙も反り返って巨大だ。
今回は残念ながら両方とも腿肉の燻製のみの入荷だが期待を裏切らない美味さだよ。」
ファンタジー風に言うと
『チキン』=コカトリス
『ビフ』=ベヒモス
となるんだろうが、聞く限りの特徴だと
『チキン』=オビラプトル
『ビフ』=マンモス
となる。う~ん。全身像が見てみたいぞ。
「両方とも1塊ずつ貰おうかの。」
「毎度! 坊ちゃんの父上さんかい? この前は、爺さんが『ポーク』肉買ってくださいましてねぇ。お味はどうでした?」
「あれは美味かったぞ。今回のも期待できるのであろうな?」
「それは食べてからのお楽しみって事で。なぁに、期待は裏切りませんって。」
と手元の塊を取ろうとする所を
「父上。奥の塊の方が美味しそうに見えますが。」
…
「…坊ちゃんは肉の目利きができるんで?」
「いえ…なんとなく『チキン』は一番奥のが。『ビフ』は奥から2番目のが美味しそうに見えたんで…」
嘘です。それが一番、魔力的に光って見えるので。
「店主よ。それをいただけるかな。せっかく息子が選んでくれたのだ。それを食べてみたい。」
親馬鹿の顔をしていますが、父上。僕の眼の特殊性、知ってて言ってますよね。
「わかりやした。その二つをお包みしやしょう。今後とも御贔屓に。」
「ウム。」




