2話 ---接近遭遇---
一休憩しようと東屋に向かったら、華やかな集団に出くわした。
ヤーな予感がしたので回れ右したかったが、すでに視認されている。引き返すのは無理か。
貴婦人たちのお茶会現場である。
ラーヤは少し離れた位置に留まり頭を垂れる。
僕は一等着飾った夫人に近づき片膝をつき、頭を垂れた。こちらから声をかけてはいけない。
おそらくこのオバちゃ…もといこの御婦人がこのお茶会の主催者アマリアーヌ母上であろう。
赤子の時の『僕』の記憶+肖像画 とも一致する。(肖像画は一部、一割増に描かれていたが)
上位貴人に対する礼儀。教わっといてよかった~。(『貴族礼儀手引書』2章1項だったかな?)
「バーバラーヤが附いているということは其方がフィロルウェインかえ?」
「はい。お久しゅうございます。アマリアーヌ母上」
…
「……其方とは初対面と思うが、『お久しゅう』とはどういったことかや?」
彼女はびっくりしていた。あれ?『僕』の記憶違いか?
「赤子の時に何度か顔を見せてくださいましたではないですか。」
「なんと、そんなにも幼き頃の事を覚えているとは。」
さらに驚いていた。
「アマリアーヌ様。その利発そうなお子を紹介してくださいましな。」
他の貴婦人が、興味深々聞いてきた。
「そうであった、この者、我がルーフィン家の長男、フィロルウェインじゃ。」
紹介されたら挨拶だったね。(『貴族礼儀手引書』2章12項)
「ご紹介にあずかりました、フィロルウェイン=ルーフィンです。お茶会の席にお邪魔してしまった事への謝罪とともに、美しき皆様へと出会えた事の神への感謝を捧げたく思います。なにぶん、洗礼前の若輩ではありますがお見知り置き下さると幸いです。」
みんなあっけにとられていた。普通、3歳児はこんな喋り方しない。
…
…
…
「っと、なんと利発なお子じゃ。」
「このお子が跡継ぎですとルーフィン家も安泰ですわね。」
「それにくらべてファルシオン様は…」
他のご婦人方の談笑の中、母上。特上の笑顔のまま黒いオーラを出すの、やめてください。