3話 ---新劇観劇---
劇場入り口はごった返している。
入場と会計が一緒だから仕方のない事だが。
チケット制にするには、上質木紙と印刷技術が必要となる。
現文化レベルではまだ無理だな。
「ヒロよ、何を惚けておる。儂らはこっちじゃ。」
昨日から父からも『ヒロ』と呼ばれるようになった。
「一般席じゃが、儂の名前で席はとっておる。大口顧客からの紹介じゃと専用の入場口があるのじゃ。」
別窓口で父が手紙を渡す。
「ルーフィン公爵様からのご紹介ですね。こちらへどうぞ。」
一般席だが、最前列。俗にいうS席と言うものか。割といい椅子を使っている。
最前列なんで、僕は椅子に直接座っている。クッションなどで嵩上げしなくても舞台がよく見える。
ラーヤの膝の上に乗せてもらい、胸パフ背もたれを堪能する計画だったのだが…残念!
オペラを2幕、観劇した後は、『侍女の朝』。『侍従の鏡』の侍女版だ。
この女優は双子か? 魔力がそっくりだ。
最後が新劇。タイトルも『フリード立身伝』。
一番知名度の高い物語を持ってきたか。
僕は絵本で呼んでもらったが、一般では、子供を寝かしつける際によく聞かされる物語だそうだ。
…プロだ。すごいクオリティだ。大スペクタクルだ。感動だ。
僕の説明から、どうやったらあんなになるの? って位すごかった。
ハルに見せてあげたい。
最後の舞台挨拶はブローディアさんだ。
一瞬[ギョッ!]としていたが、平静を取り繕っていた。
観劇も終わり帰ろうとしていたところで。
「こちらへどうぞ」
僕たちは、例の会議室に案内された。




