7話 ---精米協力---
「ヒロ様。騎士団長様とウルディーナ様、エルレン様は今、騎士団詰め所に居られるそうです。」
「解りました。すぐ向かいましょう。アリス、モドア。籠と樽、コ麦を持って付いてきてください。」
「師匠!よりもウル姉さんエル姉さん。お願いが。」
「儂じゃないんかい!」
「いえ、姉さん二人に騎士以外の事でお願いするのですから、師匠にも許可を貰います。
まずはこれを食べてみてください。コ麦で作った『おにぎり』と言う食べ物です。」
籠から出すと、師匠は遠慮なく手を出したが、姉さん二人は遠慮がちだ。
[お腹はすいてるんだけど、それって家畜のえさでしょ。ほんと美味しいの?]
って顔だな。
「うむ、美味しいのう。これは…塩のみの味付けか? あのコ麦、ホントは美味かったのじゃのう。お前ら食わんのか?」
恐る恐る手を出し、一口かぶりつく二人。
〈〈ぱく〉〉
〈はむはむ〉
〈もぐもぐ〉
〈〈ごっくん〉〉
「「おいひ~!」」
〈はむはむ〉
〈もぐもぐ〉
〈はむはむ〉
〈もぐもぐ〉
…
残りも全部食べちゃったよ
なんだよこの欠食児童は?
「ねえヒロ君もっとないの?」「もっと食べたいよ~」
「残しておいたのはこれだけですし、もう加工済みの材料もないんです。」
なんかえらく飢えてない?
「実は姉さんたちの魔法でその加工をお願いしようと思いまして。
アリス、少しは魔力、戻りましたか? 無理な様なら、魔力を渡しましょうか。」
「いえ、ヒロ様。行けます。」
「姉さん方、よく見ていてください。アリスお願いします。」
「はい、ヒロ様。『セイマイ』」
〈ザー〉という音と共に次々と殻が剥けてゆくコ麦
「コレ、風魔法じゃないの?」
「確かに、土魔法の感じがするけど…」
姉さん方には仕組みを説明し、何度か試して『セイマイ』をマスターしてもらった。
「「ねね!ヒロ君。これであの『おにぎり』作れるんでしょ。早く作って。」」
ここで、はっきり伝えねばならんでしょう。
「お姉様方に残念なお知らせが。ここから『おにぎり』にするまで2時間かかります。」
〈〈ズ-----ン!〉〉
二人は、絶望に満ちた顔となった。
「師匠、たまに、二人を借りてもいいですか?」
「別に構わんが。…しかし魔法を使ってまですることか?儂の知っているところなら杵で突いていると聞いているぞ。」
「やはりそうだったんですか。でもそれだと実が割れてしまう事多くないですか?」
「酒にするから問題ないと言っておったのう。」
酒を造る技術はあるのか、そうなると麹菌が手に入るか?
「そうじゃ、ヒロよ。今からこの二人、ヌシのところに連れて行って何か食わしてやってくれぬか。その分こき使ってやっていいから。
こいつら、昼飯を食い損ねておっての。
今の時間、休憩取らせて食べに行かすのも、他の団員に示しがつかぬ。
が、ヌシのところなら、出向扱いにできる。」
それで飢えてたのか。
でも非常食ないの?
「『非常食』は非常事食じゃ。昼飯を食い損ねたのは非常事態とは言わぬ。」
ごもっとも。
「ヒロ様。一つお願いさせていただいてよろしいですかな?」
何です?慇懃モードで。
「先ほどの『おにぎり』、また差し入れていただきたく存じます。」




