6話 ---炊出握握---
やっと炊き上がった!
匂いはまさしく『御飯』だ。
「炊けたコ麦は桶に広げて下さい。まず僕が試食します。」
スプーンで一口すくい口に入れる。
少々もちもちしていておこわ風だが、久方ぶりの『御飯』だ。
次に手水を付けた後、手に塩を振る。
素早くご飯を取り両手で形を整える。
三角おにぎりだ。
手本として数個作る。
「皆さん見てましたか? これは『おにぎり』と言います。今僕がしたみたいに、握ってください。僕の手は小さいので小さくなってしまいましたが、それぞれの手に会った量で握ってください。あと、熱いので手早くお願いします。」
ラーヤはやっぱり上手だな。
他はおっかなびっくりだ。
「あーちちちちち!」イリスはお約束だな。
おにぎりが出来た。
しかし、これだけの量のコ麦の『セイマイ』。
毎回だと、アリスの魔力量的にはつらいものがあるな。
「ラーヤの握った物を5個ほど籠に入れて置いて下さい。」
「「「「「「「「いただきます。」」」」」」」」
試食です。
やっぱりラーヤの握ったのはおいしい。
初見だけで、程よい加減が解っている。
この堅握りはベティか?
僕の握ったのだけが残される。
恐れ多くて手が出ないんだろうけど…食べてくれないと泣いちゃうぞ。
「ラーヤ。僕の握った『おにぎり』食べていただけますか?」
「どーしてもとおっしゃられるなら。
………大変おいしゅうございます。ヒロ様のお優しさがしみ込んで来る様にございます。」
そんなうれしい事言ってくれると、別の意味で泣いちゃうぞ。




