3話 ---珈琲待夢---
「ようこそいらしてくれました。父上、団長殿。…で、なんで義母上とハルがいるんです?」
「新しいものがあると聞きました。妾達だけのけ者にするとはずるいですわ。」
「ヒロ兄、ずるい。」
「…はぁ。まあいいでしょう。ようこそいらしてくれました。義母上、ハル。」
先触れもなかったのに、すでに追加二人のお茶席のセッティング済みだ。
うちの専属は仕事が早い。
「先日、市で見つけた実を加工した飲み物です。
『キャルフィー』と名づけました。」
皆の前に注がれる黒い液体。
「少々苦いのでお気を付け下さい。
ハルはあんまり飲まない方がいいぞ。夜眠れなくなるから。」
で、皆の反応は
「フム、悪くない。最初は苦いと感じたが、癖になる苦さだ。紅茶より眠気が飛びそうだな。」
「そうですね。騎士達の休憩に丁度よいと存じます。」
師匠は場に合わせて慇懃モードだ。
「悪くはありませんが、少々きついですわねぇ。」
「ヒロ兄、にがーい。」
「母上、ハル。砂糖やクリームをお好みで混ぜて飲んでみてください。」
昨日は、乳だったが今日は生クリームを用意してみた。
「これならいけますわねぇ。フィロルウェインや。これを今度のお茶会に用意するのは可能かや? あっ、先日のパウンドケーキ。あれもお願いできぬかや?」
「日にちと人数を教えていただければなんとか。ケーキは先日と同じように、僕たちが直接お持ち込みいたしましょうか?」
ふと、義母の雰囲気が変わった。
「そうそう、あれ人気だったのよ。皆がねえ、またやってほしいって。すっごい人気!これで妾の株も上がったわ。ありがと♡フィロルウェイン。でもねでもね、妾も貴公子給仕、受けたかったなぁー。」
…義母が壊れた。
「…コホン。それでお願いしますわ。」
うん、見なかったことにしてあげよう。
「義母上。紅茶も今日のように、砂糖や生クリーム、乳を入れて楽しめます。その場合は紅茶を濃い目にしてください。」
「そうですか。一度試してみますわ。」
「さとういっぱいいれると、あまくておいしい~」
あっ、義母に気を取られているうちに、ハル全部飲んじゃった。
「フィロルウェインよ。これはやり方次第で売れるぞ。」
「そうですね。これは騎士や兵にはガツンと来る味です。旦那様。ぜひ団への導入のご検討をお願いいたします。」
だから慇懃モードって違和感ありまくりだからヤメテ。
「まずは、材料の購入元だが…」
「父上、そこは大丈夫です。生産元の村には、大量購入の際には使い送る事を伝えています。探せば他の村でも作っているかもしれません。」
「うむ。団長、ではその村に使いを出してくれ。他にも作っている村があるかもしれん。」
「では、ベテランと新人のペアで探索行動させます。クククッ。丁度良い、新人の訓練ミッションじゃわい。」
鬼団長モードだ。新人団員君たち。ゴメン。
「フィロルウェイン。必要な物、手順等、資料をまとめたら執務室に来なさい。具体的な話はそれからだ。」
「はい、父上。」
何か本格的な話になってきたぞ…
次の日、修練場にて。
「おはようございます、師匠」
「おお、ヒロ。おはよう。」
「ハルの姿が見えませんが。」
「ハルは今日は休みじゃ。朝まで寝付けんかったそうでの、朝になってやっと今寝入ったとことだとな。付き合わされた御付き侍女がぼやいておったわい。」
やっぱり。




