11話 ---魔力按摩---
「ヒロ様。もうお休みになられる時間ですよ。」
「その前にラーヤ、ちょっとそこに座って。」
ヒロ様はベッドの端に私を座らせます。
「今日、強化術の実験で思いついた事なんだけど、ちょっとじっとしてて。」
肩に置かれた手より、ヒロ様の温かい魔力がしみ込んできます。
不快ではありません。むしろ心地いいっていうかなんというか…
「う~ん。ちょっとここにしこりがあるな。エイッ!」
[アハン♡]
思わず声が漏れてしまう所を何とかこらえました。
「おっと、ここにも」
[ウン♡]
「ここんとこは全体的にモミほぐして」
[ア~~~ン♡]
…
ハァハァハァ
なんとか耐える事が出来ました。でもなんですかこれは。
「ラーヤにはいつも苦労かけているからね。『魔力マッサージ』というのを施してみたんだけど、効果なかった?」
「いえ、非常に心地よかったです。疲れも取れました。」
心地いいってレベルじゃない!って叫びたいところをぐっとこらえます。
「『母の肩を揉んであげる』事に憧れがあったんだけど、僕に母上はいないし、それに僕のこんな小さな手じゃ効果ないでしょ。
今日『他人の体へ魔力を通す』事を覚えたんで、それをマッサージに応用してみたんだ。」
確かに快感で疲れなんか吹っ飛びましたが、
「私はヒロ様の御母堂様ではありませんよ。それに、無闇に侍女の体に触れるものではありません。」
しっかり釘を刺して置きましょう。
「ラーヤは僕の母親代わりでしょ。母との触れ合いを求めているのです。僕に親孝行の真似事くらいさせて下さい。」
ホントにこの主様って…。アル様もそうでしたが『人たらし』ですか?
「『魔力マッサージ』ですが他の者にはかなりきついと思います。他の者には施されない方がよいと思われます。」
こんな施術。女の子に施せばメロメロになっちゃいます。
『女たらし』街道まっしぐらです。
それは断固、阻止せねばなりません。
「心得てますよ。これの元になった『魔力注入』も騎士団長たちにはかなり不快だったと記憶しています。
実はラーヤもきつかったとか?
すまない事をしました。
この施術は永久に封印ですかね。」
えっえっえっ?
あれ、もうやってもらえないの?
「いえ、あれは私様に調整されているものですので私自身に施術していただく限りは御心配無用にございます。
疲れが取れる施術ならば願ってもない事でございます。
それにその事で、御母堂様への慕情がまぎれるのであれば、お仕えしている者にとって至上の喜びにございます。
それでしたらその施術。私のみに限定していただけると幸いです。」
「ラーヤ。なんか…必死ですね。
まあいいでしょう。疲れがたまった時には言ってください。」
うろたえてはいけませんね。途中願望が混じってしまいました。冷静に冷静に対応です。
「はいヒロ様。ヒロ様のおかげで今夜はぐっすり眠れそうです。」
「僕も、母上の話が聞けて楽しかったです。」
「それでは私はこれで失礼します。おやすみなさいヒロ様。」
「おやすみなさい。母様」
ッ! うちの主様は油断ならない。




