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5話 ---男児生誕---
ついにアル様がご懐妊されました。
丁度そのころですか。アマリアーヌ様がお輿入れされたのは。
御当主様もお家関係の縁談で断れなかったようです。
アル様生家は子爵家、アマリアーヌ様は侯爵家ではありますが、夫人の順位は輿入れの順によるもの。家格の順位ではありません。
アル様は順位などお気になされてないようでしたが、アマリアーヌ様は大層お気にされているご様子です。
その半年後、アマリアーヌ様もご懐妊なされました。
「立派な跡継ぎを生むわよ!」と気合が入っていた事を侍女たちの噂で聞きました。
難産でしたが御子は無事お生まれになりました。
立派な男の子です。
しかしながら産後の肥立ちが悪く
「母代わりとして、この子を立派に育て上げてね。」
と言いながら、アル様は息を引き取られました。
それからの私は抜け殻の様でした。
妊娠中にもっと運動させるべきだったのではないか?
教会に癒しをかけてもらえば助かったのではないか?
しまいには、
このお輿入れ自身が間違いでは?
この子さえ生まれなければ。
あふれそうな、後悔や負の感情を抑え込み、アル様の遺言のみを果たそうとしていく日々。




