5話 ---侍従剣術---
ドコデ、聞いていたか?
何を?
今日、僕たちが剣術の練習する事?
いいや、聞いて…ないな。
何をお考えなのだろうか、護衛術なら孤児院時代に一通り習ったんだけど。
何かお考えあっての事だろう、明らかにおかしい事なら進言の許可はいただいているが、こんな事は主に問い質すべきではない。
あっヒロ様。『言ってなかった』って顔してるよ。
見なかったことにしなさい。ちなみにモドア。今、護衛術、どれぐらい体が動く?
う~ん。ちょっと無理かな。卒院してこっち、鍛錬する間もないから。
ならばいい機会だ。今日、体動かしてみてからヒロ様やラーヤ様に相談しよう。私たちの鍛錬について。
「戴こう。全員休憩!」
団長からの号令だ。
きっつー。
やはり体、かなり鈍っていたな。
ヒロ様の無茶ぶりに、結構体力ついていたと思たんだけどなぁ。
「ほれっ、差し入れだよ。パウンドケーキに果実水だよ。」
「サンキュー。ベティ姐」
「おや、私たちには一切れ多いようだが」
「ヒロ様からだよ。」
ありがたいね。
そうだな。ヒロ様は無茶ぶりはされるが、その分ねぎらいを忘れない。
そこだよね。頑張ろうって気にさせる。
そうだな。そういえば……聞いてみよう。
「そういえば、ベティはラーヤ様から護衛術の指導受けてたよな。」
「………」
「なんだよ、遠い目をして。」
「どうしたんだ?」
…
…
「悪い事は言わねぇ。あんたらはラーヤ様の指導受けない方がいい。今の素振りの何十倍もきついから…」
…
…
…モドア。
…なあに?ドコデ
…ラーヤ様への相談はなしにしよう。
…それが良さそうだね。
「ただいま戻りました。ドコデ、モドアは少し休憩しておくように。」
やっと休める。
うん、ちょっときつかったね。
ヒロ様のおかげで、魔力量は増えたが、体力が落ちているとは…
後で、ヒロ様に相談しよう。
「侍従、侍女教育の護衛術って、短剣や無手ですよね。それでは剣相手にはどちらにしろ不利です。場合によっては肉壁にもなりません。僕はあなた方を無駄死にさせるつもりはないのです。『我が剣にして我が盾』に成って欲しいのです。もちろん僕も強くなります。共に鍛えていこうではありませんか。」
なんとヒロ様は我らの事を考えての事だったのか。
そだね、『主を守り切った侍従』の話より『主のために犠牲になった侍従』の話の方が多いもんな。
しかし…われらの体力持つかな?
今日だけでこんなにクタクタだとねぇ。
「明日の鍛錬は魔力を纏ってしてみてください。どういう仕組みかは解析中ですが疲れは軽減されるはずですよ。」
魔力を…
纏う?
どうすればいいんだ?
魔力って、詠唱と共に出すものだよね
ああ、出せば消費されるものをどうやって纏うんだ?
「全身から滲み出すように。こういった風なのですが、難しそうですか?」
と、ヒロ様の雰囲気が変わった。
同じようには…
う~ん。出来ないね。
「じゃあさ。魔法発動前の魔力を『心の臓』辺りにまとめてみて。」
難しいな。
うん。まとめるとすぐ散っちゃうね。
おい、モドア。お前さっきのヒロ様と同じ雰囲気になってるぞ。
えっ?
「『心の臓』は全身に血液を送り出す器官です。血液に乗って魔力も全身に行き渡ったようですね。いい感じです。その状態で明日の鍛錬、受けてください。」
相変わらず、ヒロ様の無茶ぶりには驚かされるが…
出来てしまう僕らも…ね。
明日も頑張ろうか。
そだね。




