4話 ---雷術実践---
今日はヒロ様の散歩の付き添いだ。
ラーヤ様に指導してもらいながら仕事をしていたら、いつの間にか『御付き侍女』にクラスアップしていた。
道理で最近、付き添いの仕事が増えた訳だ。
「きゃー!」ドサッ
悲鳴と共に人が倒れる音がが聞こえた。
そちらから走って向かってくる犬。
どうやら庭に紛れ込んだ野犬らしい。
アタイはヒロ様をかばう位置に立つ
「ベティ!『スタンガン』用意」
「はい!」
アタイはヒロ様からもらっていたツボ押し棒『スンテツ』を手に構えた。
スラム時代の感覚が蘇り、ラーヤ様に指導された動きをシュミレートする。
ラーヤ様はアタイにだけ護衛術の指導をしてくれた
暗殺術の間違いじゃねーのか?
ありゃ、指導というより特訓だよ。
とびかかってきた野犬を躱し、すれ違いざまに『スンテツ』を胸に押し込み『スタンガン』を発動させる。
『スタンガン』はアタイの『ビリッ』にヒロ様がつけてくれた魔法名だ
野犬は、口から泡を吹いて痙攣してやがる。
アタイも強くなったもんだね。いや、ラーヤ様とヒロ様が強くしてくれたんだね。
「何があったんです?」
ヒロ様が倒れている侍女に駆けよると脈をとられる。
さっきの野犬に襲われ倒れた侍女だ。
あっ、この侍女。アタイに成人式の服をくれた先輩だ。
「いっいきなり犬がとびかかってきてミゲレッテ様にぶつかって、それでそれで…」
見習いがパニック起こしながらも説明をくれた。
「ベティ。『AED』準備です。」
え?先輩?死んでる…の?…
…
「ベティ!」
「は、はい。」
ヒロ様は手際よく先輩の服のボタンを外し、肩とわき腹を開けさせた。
アタイはそこに手を置くが…チクショー…集中できねぇ。
「ベティ。落ち着いて。今、彼女を救えるのは貴女だけです。」
ヒロ様。んなプレッシャー掛けんなよ。
「まだです。もっと魔力ため込んで」
わーわーわー。どれだけ貯めればいいかわからんよー!まだかよ?まだかよ?
「今です。」
ヒロ様の声で、思わず発動させる。
[ビクン!!]
一瞬、先輩の体がはねた。
[ぴくんーー][ぴくんーー][ぴくんーー]
手から伝わってくる心の臓の信号。
「助かったようですね。ベティ、よくやりましたね。」
「ヒロさま~。先輩助かったよ~。助けられたよ~。」
アタイはヒロ様に抱き付いて泣いていた。
そんなアタイにヒロ様は背中をトントン叩いてくれている。
親に抱かれるのってこんな感じなのかな~。
トントンが心地いい。
…
…
…
アタイ、
ヒロ様に抱き付いてる?
それって、侍女としては不敬?
…
わ、わ、わ、わ、わ、
「ヒロ様!不敬な態度誠に申し訳なく!平に!平にご容赦を!」
これだけの言葉が一瞬で出るなんぞ、地獄の侍女教育の賜物だゼ。
なんてゆ―ちょな考え起こす間もなく。どーしよ!どーしよ!
「何を言っているんです。あれは僕にとってむしろご褒美です。さぁ庭園管理室へ事情説明に向かいますよ」
真面目な顔して眼だけニマニマしてやがる。
あっ!抱き付いた時、ヒロ様の顔に胸を押し付けていたっけ。
ったく。
こっちがテンパってるっつうのに、余裕でパフパフ楽しんでやがったのか。
いや
パフパフはされてねーか。
アタイから押し付けてただけだし。
それに背中をトントンって…
…
…
あーもう何だってんだい。
顔が赤くなるよ。
こんなの『ベティ姐さん』らしくないよ。
『こんな時は、1,2,3 と数を心の中で数えなさい』ラーヤ様の教えだ。
1
2
3
はい!これでいつもの『ベティ姐さんだ』
「はい、ヒロ様。お供します。」
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その夜、今日の事を思い出し、ベッドで身もだえる侍女が、居たとか居ないとか…




