1話 ---見習報告---
僕たちの鍛錬は2時間ほどで終わった。
防御強化術については申し分ないとの事だ。
ハルは体が動かせて満足げだ。
今まで紙を丸めたものを剣代わりにしてたのが、練習用の木製とはいえ剣が握れたのだからそりゃ満足だろう。
あれだけ動いたのに僕もハルも意外と疲れていない。
素振りだけしていた侍従兄弟の方が疲れている様子だ。
やはり魔力を纏うだけで何らかの効果があるのだろうか?
明日は二人にも強化術を習わしてみよう。
「ただいま戻りました。ドコデ、モドアは少し休憩しておくように。」
身なりを整えてもらい。報告を受けよう。
「キャルフの実剥きはどうなってます?」
「ヒロ様。ラーヤ様もガーリィ先輩も手が離せない状態でしたので私が剥きました。これだけ剥けました。」
イリスが差し出すボウルに、一杯のキャルフの種。
彼女はラーヤの教育の賜物か、ツンデレ系から子犬系にクラスチェンジしている。
『褒めて。褒めて』と尻尾が幻視できる位だ。
「ご苦労様です。綺麗に剥けてますね。ザルに広げてベランダに出して置いて下さい。」
「ヒロ様。なんで天日干しされるんです?乾かすのなら私の『カンソウ』で一発ですのに。」
珈琲豆の知識は少しはあるが、豆の採取知識はからっけつだ。
『陰干珈琲』ってものがある位だから干すものだろうって程度の思い付きだ。
「とりあえず生乾きでの状態で思った様にできるかどうかの実験です。完全乾燥の方が良いと解ったら、その時にはお願いしますね。」
「解りました。ヒロ様」
素直でよろしい。
まだまだそそっかしいところがあるようだが、しっかり成長(胸はまだだが)しているようだ。
十何年ぶりか、昔住んでた所に行く機会があった。
『陰干珈琲』が看板メニューだった喫茶店に行ったが、『陰干珈琲』はメニューから消えていた。
浦島太郎の気持ちがちょっと解った。




