8話 ---当家役割---
「当ルーフィン家は王の秘宝を預かる家系である。」
父はポツリと話し秘めた。
「この事は、王とルーフィン家当主以外知らない事だ。その秘宝とは 『死の淵にある王を蘇らせる宝玉』である。」
と、そばにかかっていた布を取ると、そこには儀式部屋にあった水晶玉?
それを俺に使ったってことは。
「本来ならば、其方は昨日、死んでいたのだ。」
虚弱なのは知っていたが死ぬ一歩手前だったなんて。しかし王家の秘宝を息子に使ったなんてバレたら…
「どうしても其方には生きていて欲しかった。アルフィーニの忘れ形見の其方には。たとえ中身が別人になろうとも…」
え?今なんつった?とことん問い質そうじゃないか。
「この宝玉はある儀式の元で瀕死の王に使用すると、怪我や病気が治り新たな知識を持って復活するというものだ。
その儀式とは、神界に生きる別の『命』を注ぎ込むもの。
使用には、王またはルーフィン家当主の承認が必要となる。
瀕死の王が復活する事で奇跡を演出できるわけだ。がデメリットもある。
王の資質無き者は儀式後、発狂したり、人格が変わってしまった者もいる。
そのような場合、速やかに処分することも当家の役割となる。
この事はあくまで、先代からの口伝であったが…」
『命』とはなにか?
細胞は1個単位で『生きて』は、いる。
しかしながら脳の働きがないと体細胞的には生きていても 個体としては『死』んでいるのだ。
つまり『命』とは脳細胞の活動そのものということになる。
『命』=『脳細胞の活動』=『意思と記憶』。これが『生きる』ためのエネルギーということか。
『俺』の世界では『命』自身、エネルギーとして科学的に証明はされていないが存在はしている。『超能力』『霊能力』といった眉唾ものではあるが…
『僕』の世界ではそれが可能と仮定しておこう。
『神界』とはこことは違う別世界の事であろう。
儀式とは、別世界の個体から『生きる』ためのエネルギーすなわち『意思と記憶』を召喚し別の体に融合させるもの。
体は新たなエネルギーつまり『意思と記憶』を得て復活する。
しかし、『王の資質無き者』つまり王としての自覚の無い者は召喚意思との不整合により、発狂・別人になる?
どうやら『俺』は転生したわけでは無く、ちょうど事故のタイミングで召喚。『僕』に融合されたらしい。となると、『俺』の体すでに死んでいることになる。まあ、事故後のあの様子だと召喚されていなくても死亡確定だったろう。
『転生』は理解できないが『召喚』なら理解できる。
空間は重力によって『曲げられる』のだ。現代科学ではそれを制御する術がないが、曲げてつなげる事が出来れば『転移』=『召喚』は可能なことが解るだろう。あくまでも制御出来ればだが。
『たられば』ばかりの話になってしまうが、とりあえず次に進もう。