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フレイザル様、寝込む。

「……」


式典まであと二日。

助けて、今、僕はベットの上で恐い顔のリリフに見下ろされていています。

毒を飲んでしまった僕を心配してグランゼは部屋まで送ってくれて、すぐ横になったけど二日間ほど寝てしまったみたい。

しかも鍵をかけ忘れてしまった、リリフが怖すぎる……憂鬱だ。


「あの……リリフ」

「ふれいざるぅぅ」


さっきまでグラフィン兄様はベットの横にいてくれたんだけどリリフにうるさいと追い出されてしまった。

微かに部屋の外から兄様の声が聞こえてくる。


「それで毒とわかっていて飲んだと……」

「うん」

「バカですね、貴方、相変わらず」


頷いた僕に落とされる冷たい声と視線に耐えられそうにない……。


「勝手ながら汗をかいておられたのでお拭きしたのですが、その首の痕はなんです?」

「これは……えーと、なんだろう、えへへ」


どうしよう、何も思い付かない、そうだ、笑って誤魔化して……。


「目が泳いでらしてよ」


笑顔が恐いよ、無理です。

何も思い浮かばず誤魔化すことが出来なかった僕は兄様も交えて話すことに決めた。


「そんなことが、っ俺はお前の騎士失格だ……」

「まったくですわ、主の危機に駆けつけぬ騎士など早々に辞職してフレイムルドに帰還なさってはいかがしら」

「……」


いつもだったら二人の言い合いが始まるのに兄様は悔しげな表情のまま黙っている。


「グラフィン兄様……っぅ」

「!!」


兄様がどこかに行ってしまいそうな気がしてベットから起き上がると目が眩む。


「大丈夫か!?、眠り続けていたんだから急に動かない方がいい」

「兄様」


気づいてくれた兄様が側によって支えてくれた。


「……お兄様がいなければ眠っている間にフレイザル様の御髪がさっぱりしていたはずですのに……私の邪魔ばかりなさって」

「え」


リリフの恐ろしい呟き。

その手には見慣れてた鋏が、あ、危ない、兄様がいなかったら寝てたまま切られてたッ。


「グラフィン兄様、ありがとう!!」

「あぁ」


僕が笑うと兄様も笑い返してくれた。


「フレイザル、陛下もお前の祝辞を楽しみされているが、このままでは危険だ……辞退しよう、いいな?」

「何をおっしゃるの、お兄様!?、式典まであと二日です、今更っ」

「俺に全て任せて休め」


リリフが取り乱して声を上げたけど兄様は優しげに笑って僕を見つめたまま。


「部屋から出てては駄目だぞ、約束してくれ」

「で、でも兄様……」

「お兄様ッ!!、脅迫状は三通、恐らく刺客はあと一人でしょう、それでしたらお守りすればいいだけの」

「俺が守ればいいと思っていた、その自信はもちろんあったが……今は」

「ッ、それが騎士の言葉ですか情けない!!」

「本当に情けない……だがな、リリフ、俺はフレイザルを守りきれるならどんなことでもする」


リリフは納得できないといった様子で優しげに笑う兄様を睨んだ。


「どんなことでも?、それならば、つべこべ言わずお守りすればいいではありませんか、それにおば様がお許しにならないわ!!」

「第一王妃様が頷かなければ方法は一つだけだ、お前も分かっているはず」

「思い上がるのもいい加減になさい!!、ただの騎士が陛下に……」

「ただの?、俺はフレイザルの騎士だ、それだけで目通りが叶う」

「陛下に……どこまで話すのですか……」


リリフの声が弱々しくなる、そんな声を聞いたのは始めてかもしれない。


「全てだ、脅迫状に刺客」

「全て?、脅迫状が届き黙認しフレイザル様を危機に陥れたのだと申し上げると」

「あぁ」

「愚かなことを……それは私たちだけの失態ではなくなりますわ、おば様にも」


迷いなく頷いた兄様を馬鹿にしたようにリリフは笑みを浮かべた。


「リリフ、どんなことでもすると言ったはずだ」


何だか、いつもと違う二人に僕は声をかけられない。


「お兄様には、この祝辞を述べるということの大切さが理解できないの!!」

「解っているさ、フレイザルが次期国王と周囲に改めて解らせる為だろう」

「なら邪魔をしないで」

「これ以上話しても意味がない……俺とお前は」

「えぇ、お兄様はフレイザル様の為に、勝手ながら私は陛下の為に動いている……ですが私の行動はフレイザル様の為にもなっているはずですわ」


二人が言い合いを始めてしまうのは僕のせい、僕に関することだ。

そしてリリフの想い人は国王、僕の父様。


「フレイザルを次期国王にする為にだろう、フレイザルの意思関係なく」

「意思?、何を甘いことを、それがフレイザル様の……王子の務めでしょう」


父様はどうしてか分からないけれど僕を次期国王にと望み、そしてリリフは父様の望むことを全て叶えたいと動いている。


「王子であること、それがフレイザルを危険に晒すならやめてしまえば……」

「お兄様!!」

「兄様……」

「心配ない、任せておけ」


兄様の大きな手が僕の頭に触れた、前髪が邪魔して兄様の顔は見えない。

僕の頭から兄様の手が離れ見えたのは兄様の背中。


「お待ちになって、お兄様!!」


リリフの声に振り返ることなく兄様は部屋から出ていってしまった。


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