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フレイザル様の憂鬱なる日常

「僕は……ぁ、うう、俺はエルドクル国、第一王子、フレイザル・ロード・エルドクル……」


またダメだ、うまく言えない……憂鬱だ。

自室の姿見の前で国王である父様の誕生日を祝う式典で祝辞を民や臣下の前で披露する練習中。


これは王位第一位の貴方がなすべきことなのよッ!!、凄い形相の母様に言いつけられて嫌だと言えず。


式典まで、あと一週間。

僕は第一王子だけど腹違いの弟達が三人いる。

弟達は力に目覚めているし僕なんかよりもとても優秀で王位に相応しいと思う、母様には言えないけど。


「はぁ……おなかいたい」


僕は鳩尾を擦りながら鏡の映る自分の姿を見つめた。

目付きが悪いのを隠そうと伸ばした前髪を退かす。


「うぅ、いゃ、恐い」


鏡に映った紫色の瞳と長い髪。

式典ために作られた紫を基調とした礼服。

顔付きも髪と瞳の色も父様と母様にぜんぜん似ていない。

穏やかに微笑む父様は金色の髪と瞳で厳しく美しい母様は赤色の髪と瞳をしているのに……。

もちろん、二人はこんなに目付きが悪くないし僕は誰に似たんだろう。


こんな僕の話を民や臣下が聞いてくれるはずがないと気分が沈んでいく。

目が合えば反らされるし動物は逃げちゃうし子供なんか泣き出しちゃう、僕のことなんて皆怯えて終わり。

昔は可愛いとか綺麗とか言われてたのに今じゃ背も伸びて恐いなんて言われちゃって……。


「あら、フレイザル様ったら今日は何回目の憂鬱モードに突入ですの?」

「っ、うわ!?」


背後から突然、声をかけられ後ろを振り返ると幼馴染みのリリフがいた。


「もうリリフ、いつ入ってきたの、ノックしてよ、それに気配消して背後に立つのやめて」

「あらあら、フレイザル様と私の中じゃありませんか、そんなの不要でしょう」

「……ますます誤解される、やめて」


彼女の名はリリフ・ストレイル、幼馴染みで母方の従妹、僕の侍女をしている。

リリフが僕の侍女になったのは表向き僕の我が儘になっている。

本当は違うのに、リリフが僕を脅したからなのに!!。

そのせいで周囲には僕らが付き合っているという事実無根の噂が流れていて憂鬱だ……胃が痛い。


「これ以上ないくらい誤解されてるじゃありませんか、だから遠慮なしですわ」


リリフは自分の魅力を使う術を知っている、前にそう本人が言っていた。

わざと赤い長い髪と豊満な胸を揺らし赤い瞳で上目使い、微笑み愛らしさを全面にだす。

しかし、彼女とは長い付き合いなのでときめいたりしない、むしろ鬱陶しい。


「僕に遠慮して」

「もう!!、そこは私の魅力に頬を染めるところでしょうに」

「それは好きな人にしなさいって言ってるでしょ」

「ひどいです、フレイザル様……私の気持ち知ってるくせに!!」


彼女が僕を脅してでも侍女になった理由は好きな人の姿を近くで見ていたいからだ。

相談されたけど、リリフの好きな人は僕の大切な人、応援は難しい。


「……ごめん」

「いいえ、その礼服、よく似合っておりますわ、きついところはございません?」

「大丈夫だけど近い」


僕の腕にしがみつき胸をおしつけてくるリリフを遠ざけようとして腕をひく。


「……フレイザル殿下、失礼します」

「ぁ」

「!!」

「あん、そこはダ、メぇ」


ノックとともに部屋の扉が開くと入ってきたのは険しい表情のもう一人の幼馴染みだった。


「グラフィン兄様!?、これは違」


彼の名はグラフィン・ストレイル、リリフの兄で僕の騎士だ。

黒の甲冑に赤い髪と瞳、凛々しい顔立ち、いつも助けてくれる兄のような人。


「……分かってますよ、リリフが困らせているんだろう」

「うん、ぁまた僕、兄様って……ごめんなさ」

「っいいんだ、二人の時は兄様でも、だからそんな悲しそう顔するな」


幼い頃は兄様って呼んでいたけれど僕の騎士になってからは兄様じゃなく名前で呼ぶよう言われてたのに。


「あら、私がおりますわ、お兄様……それに、ここはフレイザル様が権力を使い私に無体を働いている図なのではないかしら」

「ふざけるな、殿下がそんなことなするはずがない、リリフ、すぐ離れなさい」

「あらあら、羨ましいのかしらぁ、お兄様?」

「な、なんだと?」


ますます柔らかい胸を押し付けられて、どうすればいいかわからないけど二人の間に不穏な空気が流れてるのを感じる。


「喧嘩はダメだから!!」


二人にとってはじゃれあいみたいなものなのかもしれない、こんなところで二人の争いが始まったら危ない、主に僕と僕の部屋が消し炭になる……憂鬱だ。

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