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毎週土日の更新です。

 着実に、イベントをこなしている、ヒロイン、ティエラは、どうやら、逆ハーのルートを選ぶらしい。

 乙女ゲームが五ヶ月も過ぎると、たいていの攻略者たちが、ティエラに集まりはじめていた。

 難易度の軽い相手から、ティエラは、ゲームを進めているらしかった。

 そうしないと逆ハーエンドにはならないからだ。

 ティエラは、第二王子、ハラットと親しくなりはじめ、その後、ラッセーと、ウィリアムを攻略しつつある。

 ここまでは傍観してられるが、問題は、この先である。

 ディフラーには、婚約者がいるのだ。

 婚約者がいれば、黙ってみているわけにもいかない。

 親しくなる前に手は打たないといけない、と感じたレーネットは、仕方なく、アトラスを呼び出すことにした。

 アトラスとは、かつて、何回か、王族に危険が迫った時の状態で会っている。

 もちろん、その場には、アトラスの父親や、兄などがいたが、今回はひとりだ。

 公爵令嬢が、男性を呼び出すのは、なかなか難しいことである。

 しかしながら、これ以上、ティエラを攻略者に近けることを、どうしても避けたかったため、正式なる場面を作ることとした。

 場面は、王宮のとある一室。

 その場にいるのは、第一王子、マクレーンと兄、レーベルである。

「アトラス様がおいでになっております」

 王宮にいる、侍女の声に、レーネットは、一瞬、瞳を閉じた。

 マクレーンとレーベルには、これからアトラスを交えて、大事な話しがあるとだけしか、告げていない。

 アトラスが、もし、この時点で、ティエラの存在を意識していたなら、レーネットの作戦どころか、ガシュール公爵家も危うくなる。

 しかし、ティエラが現われた時に、この計画を話していたところで、レーネットの話しが、マクレーンや、兄には伝わるとは思えなかった。

 なので、数ヶ月の時を待って、レーネットは、アトラスを交えて、この計画を話すことにしたのだ。

 上手くいくかどうか、瀬戸際に立たされているレーネットは、やってきた想い人に、大きく息を呑んだ。

「レーネット。役者は揃えたが何を話すつもりだ?」

 兄、レーベルは、レーネットを見て、促した。

 レーネットは、覚悟を決めて、顔を上げた。

「最近の学園の様子を、マクレーン殿下も、兄も、そして・・・アトラス様も、存じ上げているかと思います」

「あぁ、ティエラという女性についてか」

 常に、兄弟の動向を知っているマクレーンの言葉に、ピクリ、とアトラスは表情を動かし、レーベルは顔をしかめた。

「ハラット殿下が最近、夢中になっている女性ですね」

「あぁ、何度か注意したが、わたしでは無理だったな」

 レーベルの言葉に、マクレーンは仕方なさそうに言った。

 何かにつけて、マクレーンに対抗意識があるハラットは、マクレーンの助言を受け入れることなどできないだろう。

 学園にはいないマクレーンと兄であるが、王族が通っている、というだけで、学園の様子はいろいろなところから情報が入っているということは、レーネットは知っていた。

 そこであえて、アトラスを呼び出したのだ。

「ハラット殿下に加え、ラッセー様、ウィリアム様と親しくしている、ティエラ様でいらっしゃいますが・・・ディフラー様とも最近、親しくしているのです」

「なんだと!ディフラー殿には、婚約者がいるではないか!」

 王子のことは把握してはいても、他のことまでは知ることができない、レーベルは、声を上げた。

 ぴくり、とまた、アトラスは、微かに表情を歪め、それが事実であることを証明したのを、マクレーンは見逃さなかった。

「何故、報告しなかった、アトラス」

「・・・ディフラー殿は、ティエラ嬢と話しているだけにしか見えませんでした」

 アトラスの言葉に、レーネットは、それはそうだ、と感じる。

 ディフラーには、学園に婚約者がいる。

 ティエラと親密な関係だと公になれば、それだけで騒ぎになるのだ。

 それをディフラーは知っていて、ゲームのなかでは、誰もいない音楽室でティエラと親しく話すようになる。

 表向きに親しくできる、第二王子とともに、学園をまとめる向上委員会、夏美の世界では生徒会となるものにディフラーや攻略者たちは入るのだ、ティエラとともに。

「アトラス様にはそう見えても違うのです。手遅れになってはいけません。わたくしは、決意しました。これから話すことを、聞いていただけないでしょうか?」

 レーネットは、アトラスに嫌われるかもしれない、もう心をティエラに奪われているかもしれないと覚悟した上で、話しはじめた。

 己が転生者であること・・・これから起こるすべてのこと。

 それを信じてもらうために、アトラスに協力してもらわないといけないことに、罪を覚えながら。

 レーネットは、ループリア王国が、混沌しないために、己が転生者だということを三人に告げた。

 その数日後の休日、またも三人が揃った。

 レーネットが報告した、ループリア王国の危機が真実だという鍵を握る人物、アトラスは堅い表情をしていた。

 いつも寡黙で、表情の変化がないアトラスだったが、いつもループリア王国に何かあると、その表情を動かし、最近、学園で起こった出来事を、記した報告書を、マクレーンに提出した。

「真実だったか・・・」

「レーネット。疑ってすまなかった」

 その報告書に書かれれているのは、ティエラがここ数日こなしたイベントの数々であり、そこには、ディフラーとティエラの密談の報告、これからはじまる、アトラスへの接触があった。

 マクレーンと、レーベルの言葉に、静かにレーネットは首を振った。

「わたくしが「転生者」であることを信じるのは、現実では難しいですわ。ですから、謝罪は不要です。わたくしのお言葉に耳を入れてくださるのなら」

 レーネットが言うと、マクレーンとレーベルは頷き、表情を固くしているアストラは、レーネットに視線を向けた。

「レーネット令嬢。あなたが申し上げることに、わたしはすべて、従うと誓います」

 そして、頭を下げるアトラスに、レーネットは、まだ、アトラスが、ティエラに心を奪われていない、ということにほっと息をついた。

「これは思ったよりも危機的な状況だ。ロペス伯爵家と、アラード子爵家は、医学療法において、魔法能力を用いた新たなる技術を開発中だ。そのアラード子爵のエラット令嬢は、ディフラー殿の幼馴染であり、恋愛的な意味と兼ね合い、婚約したはずだ。それを翻すことになればどうなるか・・・」

 マクレーンの言葉に、レーベルとアストラは、息を呑み、レーネットは、この状況打破するのにはもう、動くしかないと感じていた。

「レーネットの言ったことは真実だとしてもこの状況は厳しいが、レーネットはどう考えるのだ?」

 ヒロイン、ティエラともう接触していることは、マクレーンたちには話してある。

 そのうえで、レーベルは、レーネットの転生者としての記憶を頼りにするしか方法はないと考えているのだろう。

 着実に逆ハーレムのルートを進んでいるティエラ。

 レーネットは、ヒロインの逆ハーエンドをどうしても阻止する方法を考えなくてはならなかった。

「ひとつだけ・・・方法がありますわ」

 レーネットが告げたその方法というものに、マクレーンたちは、その後、水面下にて動きはじめたのだった。


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