∞① 神に愛されし少女
「“――ああ、誠に悪なのは正義の仮面を被った者であった”」
ようやく文化祭のトリ・演劇が終わった。
これが終わったということは、私のこの学園での生活が終わりという意味でもある。
「リーネ転校続きでごめんな……」
「お父さんのせいじゃないよ」
母が外国人で海外で生まれた私は母に他に好きな相手が出来て10歳から日本にやってきた。
友達ができる前にいつも仕事の都合で転校、友達は作らないから寂しくない。
「次にいく場所は海外なんだ。まあ住むわけじゃなくて少し要人と話したら日本に帰るけど」
「え?」
「でも危険なんだよな……」
「危険?」
魔族と呼ばれるファンタジーチックな伝承が残る村らしい。
「Mr.光、お待ちしてました」
村外れにあるお屋敷に入ると、美男が出迎えてくれた。
「どうもソディラムさん、こちらは娘のリーネです」
「はじめまして」
父の仕事関係者に頭を下げる。
「聞いていた通り美しいお嬢さんだね」
「しかし貴殿ほどの方ともなればハレウッダの女優も言い寄ってくるでしょう?」
「いやはや、あまりキツい女性は好みではなくてね」
辟易したと言わんばかりの様子で、両手をあげる。
「あまり遠くへ行ったらだめだぞ?」
「うん」
私たちはソディラムさんの家に泊めてもらう事になった。
人気がまったくなくて、むしろ大丈夫なんじゃないかな?
と思いながらネットも無い外国のだだっ広い庭で遊ぶことにした。
「……」
なにやら近くの森の入り口から少女がこちらを見ていた。
「あの……」
「うわっ!?」
私が声をかけると、少女が尻餅をつく。
「言葉通じる?よかったら私と遊ばない?」
「うん!!」
こんな辺境の地なのに、少女は私と同じ言語を話せるようだ。
「わたしいつも一人づ作る。友達と花冠初めてだ」
「私もいつも一人だったけど、花冠も初めてだなあ」
「ニホン花ないの?」
「あるけど花瓶にいれて見るだけ」
私は友達と普通の話をしたことがないけど、ちゃんとそれらしく話せてるだろうか?
「そっか作り方おしえる」
「うん」
花冠とか指輪の編み方を教わった。
「あの、今さらだけど名前は?」
「レノエアーデ。そっちは?」
「リーネ=ロアール」
「それ見た目と合ってないな!」
「あはは。だよね~」
初めて友達と笑いあった。
「今日はありがとう」
「また会える?」
「うーん明日帰っちゃうからなあ……」
レノエアーデは寂しそうに別れのハグをしてさよならを告げる。
「おはよう」
「おはよあーねむねむ」
「よし、帰るぞ」
「う、うん」
日本に帰り、新しい学園に通う。
「はあ……皆フレンドリーだった」
どうせすぐ別れるんだろうな。
「おい……」
「あ、ごめんなさい」
ため息をつきながらトボトボ歩いていたら、見知らぬ銀髪イケメンにぶつかった。
「どこ見て歩いてんだよ」
銀髪のガラ悪いイケメンが迫って、眼前に指が延びてくる。
「道の真ん中で何をやっている。早くどけ、邪魔だ」
「あ?」
長い金髪の男性が腕をつかんで銀髪男を投げ飛ばした。
私はその隙に走って帰宅する。
レノエアーデに貰った花の指輪を落としたけど、取りに戻る勇気が出ない。