Ⅲ●① クリックゲーム
「おはよ」
「おはよ!」
数少ない友人ルミアに挨拶し、自分の席につく。
「なんか最近ネットゲーム中に死ぬやつが続出中らしいぜ」
「それこそゲームでありがちな話だろ」
「だよな~」
男子たちがゲラゲラ下品に笑っている。
「はあ、ガキばっかでやんなっちゃう」
「ほほーアメリアちゃんは年上がお好みですかー」
「ルミアはいいよね近所にイケメンさんいてさ」
たまにすれ違う程度しか見てないが、ザニーズに入れるくらいのイケメン。
「でもいいのは顔だけだよ。いっつも日向ぼっこしてるし」
「なにそれじじいかよ……」
「そういうルミアはどんな男子がタイプ?」
「ラジウルくん!」
あんな友達一人もいなそうな暗い奴がいいの?
「へー一匹狼が好きなんだ?」
「一人でいる人ってほっとけないじゃん」
なんだそういう意味で―――あれ、それって私のことも含まれちゃってる?
†††††
「ルミアって生徒会長向いてそうだよね」
ストレートの紫髪。
「ムリムリ、部活あるし」
家が道場で柔道部というギャップ。
「そういうアメリアちゃんこそ、向いてるよ」
「見た目は馬鹿女だけどねー」
私は地毛がクセのある茶髪で、顔立ちが丸くて少女漫画原作ドラマの主人公みたいとよく言われる。
「じゃ、また明日」
「うん」
帰宅部の私は真っ先に自宅へ帰る。
「なにがネットゲームにありがちなシナリオよ」
今朝男子が馬鹿にしていたのは私がハマっているネットゲームのストーリーテーマである。
たしかにこれの他にそういう題材は沢山あるだろうが、私にとっては違う。
主人公の男女を選択でき、イケメンがいて、結末が自分で選べるというのはそこらのカスゲーとは違うのだ。
「記念すべき15周目、強くてニューゲーム!」
明日は土曜日、両親は仕事で家に帰らないし徹夜でゲームしても怒られない。