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檻生活からの脱却。

 この檻に入ってから既に十日、此処から抜け出す術も無いままにダラダラと前世と変わらぬ生活を続けている僕なのだが不思議とこの暮らしが嫌じゃないと思えてきた。


朝、昼、晩の食事付き、しかも部屋の掃除も朝と晩の食事の後にやたらとガタイの良い坊主頭のお兄さんがてきぱきと部屋の埃と排泄物を片付けてくれるのだ、最初は慰み者にされるのかとビクビクしていたのだがそれも杞憂だったようだ。



 何故こんなに好待遇なのか?と言う疑問が頭の中をグルグルと回り不安と不信が溢れ出そう所でその疑問が解決される出来事が起こる。



 朝から雨がしとしとと降り始め昼の食事を済ませる頃には土砂降りに変わっていたある日の事、掃除のお兄さんとチェスのような将棋のようなゲームをしていると檻の扉がゆっくりと開いた、その扉をゆっくりと潜る二つの影、一人は小綺麗な服をきた背の低いお爺さん、もう一人は革の鎧に身を包み腰に帯剣した女の子、一見不釣り合いな二人なのだがお爺さんの喋り方、身のこなしを見るにどこかの貴族か商人、女の子は護衛といったところだろうか。



 二人の観察をしているとふとお爺さんが話し掛けてきた。



「ただ飯喰らいの異邦人とは、ぬしの事か、ふむ、黒髪、黒眼とはまた、珍奇な成りをしとるのう、ぬしは何処から来たんじゃ?ヤワト国か?それともアキシ国か?」



 聞いた事の無い国名が出た事で、ここが異世界だと言うことを改めて気付かされた、前世の記憶と今の現状を照らし合わせてみると何も変わりがない、なんの為にこの世界に来たのかと思考を巡らせていると頬に痛みが走った。



「何をぼーっとしている!アラン様の質問に早く応えぬか!」



 思考停止とはこの事なのだろう、頬に張り付いた痛みのお陰で冷静になれた。



「あ、あ、すみま…せん、じ、実は僕記憶喪失で、だからヤワト国とかアキシ国とかいわれてもわからないんですよねー…はは」



 叩かれた頬をさすりながら、ありもしない記憶喪失をでっち上げる。



「ふむ…、記憶喪失のう、何も覚えとらんのか?」



 ここは嘘を言う必要も無いと思ったので、この檻に入れられるまでの顛末を話す事にした。



「ふむ…そうじゃの、ここではなんじゃから、ワシの部屋で話を聞くとしようかの、ゴラム、アニーシャ、それからヌシもついて参れ」



 ん?なんかわからんが、檻から出してもらえるらしい、あと、聞き慣れない名前が出たのだが、僕のお世話係りのマッチョなお兄さんがゴラム、護衛の女の子がアニーシャ、と言うらしい。



 

 檻から出て、腕を挙げて背筋を伸ばすと小気味よい骨の音が聞こえた。





 石畳の廊下を歩く、廊下の両端には僕が入ってたのと同じような檻が十程並んでいる、軍の施設なのだろうか?しばらく歩くと右手に階段が見えてきた、上りの階段だ、結構大きな施設だなと考えているとお爺さんが小声で話しかけてきた。



「さっきは、悪かったの、それにしてもアニーシャの奴はおなごじゃと言うのに直ぐ手を出すから困っとるんじゃよ、それに比べて弟のゴラムはおとなしい男じゃわい、どこでどう間違ったのか姉と弟の性格が真逆じゃわい」



「いえ、アニーシャさんからすれば僕は不審者ですから仕方ないですよ、所であの二人本当に姉弟なんですか?」



「そうじゃ、全く似とらんが血の繋がった姉弟じゃ、姉がアニーシャ・バルド、弟がゴラム・バルドじゃ、二人はワシの息子と娘みたいなもんじゃな、っと到着じゃ」



 他愛もない話を終えしばらく歩くと階段を上がりきる、左右に扉のある廊下の突き当たりを右に曲がると両開きの大きな扉があった、パッと見た感じ地味な扉なのだが細かな装飾が施されており中々風格のある佇まいだ。


 その扉を開けて中に入る、十五畳程の部屋だろうか、真正面には大きな机、机の手前には一枚板のテーブルと三人掛けのソファーがテーブルを挟むように置かれていた。

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