呪い屋②
放課後。
ザワザワと波うつ人の声は反響して混ざる
昔から人が多いところは苦手だ。
何気ない雑談達がぐるぐると錯綜して頭がガンガンする。別に人が苦手なわけじゃないし俺だって友達と馬鹿をするときは波の一部になるんだろうが
ふとした瞬間に、まるで俺だけが違う場所にいるみたいに遠くなる
切り取られた空間の中、透明になった気がして酷く人の声や温度が遠退いて、膜を通しているようなそんな言葉で伝えるのは難しい感覚になる
...人に酔ったかな。
ふう、と小さなため息がなんとなしに出てしまう。
ぼーっとしてるとはよく言われるが疲れが出ると頭も働かない。試験勉強を夜更かししてしまうのはやっぱり駄目だな
そんな俺の意識をこちらに戻したのは肩に乗せられた手
「!?」
「っと、悪ぃ。待ったか?部長がなかなか離してくれなくてよ」
大島 大地
野球部の期待の星と言われ、勉強も出来る。女子に優しくモテるがそれを鼻にかけない。少しお調子者なところもあり男子の友達も多い
正直、幼なじみでなければこんなに親しく話したりする関係ではなかっただろう。
今日だって大地の家で飯を食う約束をしていたためいつもならさっさと帰るのを待っていた
「いや、大丈夫だ。大地は人気者だからな」
別に大地が嫌いなわけじゃない。むしろ親友だというこいつの言葉をいままで否定したことは一度もないし、これからもそうだろう。ただこいつは人気者で人に囲まれているタイプだから幼なじみじゃなかったらあまり話すこともなかっただろう、と思う
「そっか!じゃ行こうぜ!お袋、日暮がくるっつったらめちゃくちゃ張り切ってたからさぁー今日はたぶんごちそうだな!」
夕陽 日暮
ギャグかと思うような名前だが、それが俺。
どれだけ夕方が好きなんだよっとつっこみたいところだが、相手もいないし17年もこの名前で生きてきたし諦めている、だってどうしようもない
「桜さんは料理が上手いからな。楽しみだ。」
そういって笑えば大地はおう、期待しとけーとあたかも自分が作るかのように笑う
呆れたように笑いながら俺はその横にならんで、そんな何気ない毎日が当たり前だった。
当たり前がずっと続くと思っていたんだ。
ーーあの日までは。