呪い屋
黒。美しく手入れされ身の丈以上まで伸びている髪が舞う。いや舞う、という表現はその場には相応しくなかった
バッサバッサと振り乱しながら、黒が。
アァア゛アアアァ゛
こんなハズじゃなかった!どうして!
嫌だ!嫌だ!私は、ぁあ!
支離滅裂な言の葉は呪詛のように、じわじわとナニカを侵食する
赦さない!助けて!何故!愛してる!殺してやる!会いたい!会いたい!会いたい!
ガチャガチャ、ガチャガチャ耳障りな鉄の音
白く細い手足に不似合いな冷たいそれは暴れれば暴れる程自身を痛め付けているのだろう
しかしまったく痛みを感じていないかのように暴れ、呪詛を吐く
ただ、周りの人間は気味悪そうにそれを見、聞いているがその支離滅裂な言葉にはどこか深い愛が感じられた
若い恋人達が紡ぐ甘く、柔かな愛ではなく
暗く何処までも深い、深淵のように。相手の意思など関係なく何もかも飲み込むかのような
アハハ、アハハハハハハハハ
ヒャアハハハハ...ハハハハ
壁一面の血文字は最早解読不能。高く笑いながらさらに意味不明な文字がたされていく
呪いのようだと思った。深く深く存在を刻み込むような。
そして、暗転ーー…