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トントン
「陽明殿、来客です」
来客?今日はないはずだが。
「分かった」
そう言い部屋からでると会いたくもない奴とその部下2人。
「帰れ」
そう言った俺は悪くない。
杏がいたら咎めるだろうが残念ながらいない。
なんでこんな時に・・・
「俺も一刻も早くお前の顔を抹消してやりたいが今日は聞きたいことがあって来たんだ」
チラッと隣にいた部下、杏が一番に仲良くなったという織姫に合図した。
「杏が結婚すると聞いたのですが」
「そうみたいだけど」
「相手を知っていますか?」
「いや知らない・・・・夏白なら知っているかもしれないが。
何か問題でも?」
「問題があったもなにも」
ポイッと投げれた書簡に目を通すと驚きだった。
「これは・・・」
「今日色んなところから経由してきた告発文だ」
そこにはコツコツと悪事が書かれていた。
地主や地主の息子だけではなく親戚一同染まっていた。
「誰か珊江へ監査官を出すように使者を」
その言葉に俺の部下たちが俺の後ろでさっと動き始めた。
早くかたをつけないと杏までもが被害を被ることになる。
いや下手したらよくて左遷、悪くて辞めさせることになる。
例え元配偶者と言えど前科があるものが身内にいた場合は排除しなければならない、それが失脚の芽となってしまうこともあるからだ。
「杏に結婚相手を知らされないほど信用されてなかったんだな」
鼻で笑われた気分になる。
確かに結婚相手どころか結婚することさえ俺は知らなかったからだ。
「戻ってきたら早急に杏を俺のところに迎える。それだけだ、じゃあな」
ばったんと閉められた扉を見ていやな気分になる。
確かに杏が犯罪者のところへ嫁ごうとした件は見抜けなかった俺の責任もある。
だいたいあいつが杏にこだわっているのは好きだからだろ。
ただの職権乱用に過ぎないと思うが。
「陽明殿」
「なんだ」
「この件、任してくれないでしょうか」
杏に対して初めの頃はよく物申していた子忠の言葉に驚いた。
「いい考えでもあるのか?」
「杏殿に祝言を挙げてもらい途中で監査が入って一掃するというのはどうでしょうか」
一瞬にしてさっきまで動いていた周りが固まり、どうするんですかこの朴念仁という生暖かい目が向けられているのが分かる。
俺だってまさかそんなこと言うとは思わなかった。
「・・・お前、そこまでして嫌がらせをしたいのか」
「は?杏殿とはよき仕事仲間と思ってますが」
「だからモテないんだよ」
「何故そういう話になるのか分かりません。
しかし親戚一族をいっせいに捕まえるのはうってつけな機会かと。
杏殿も知らずに嫁ごうとしたという汚名から身を張って囮をしたという評価になります」
「なら祝言前に捕まえたほうが傷つかなくて済むんでは・・・」
「祝言の日に到着するものもいるかもしれませんし、祝言前に動くと気づかれるかもしれません」
確かに気づかれて証拠を燃やされたらおしまいだ。
それなら商家と結婚したと浮かれているときに捕まえたほうが確実だ。
「すまないが俺が行く」
「「え?」」
・・・・・・・何言ってるんだ俺。あいつに会っておかしくなったのか?
「そう・・・ですね。
説明をするため杏殿の家に伺う時誰も出席しないはずなのに同僚が一人行くというのは少し怪しすぎますね」
「ああ」
気づけばとんとん拍子にいろんなものが決まっていったが俺はどこか気持ちが浮いていた。