第二話 ロイの入国
少し遅れました。前話を書いた直後に風邪をひいてしまい、少しずつ考えながら書いたのでこんなに時間がかかってしまいました。この俺のバカたれめ
side???
「なんだこれ?でかすぎるだろ…」
俺は自分の目の前に荘厳とそびえ立つ城門に驚きを隠せなかった。この城門と城壁、パッと見るだけでも高さが100メートルくらいあるのがわかる。
っていうかもはや檻だろうこれは。なにかを閉じ込めておきたいようにしか感じられない。まぁどうでもいいんだが、どうやって中に入んだよこれ、高さだけじゃなくあきらかに分厚そうだ。
……………ノックでもすればいいのかしら。
城門に近づいてみて、構える… コン、コ~ン
「もしも~し、宅配便で~す!」
……………………………返事は………………………無い。 ですよね~~
くっそッ、どうするべきか、力づくで城門破んのはまずそうだしな。 そうしながら俺がどう中に入るか考えていた時だった。
「おいッ、お前一体なにをしているッ!!」
sideドルド
暇だった。とにかくありえないほどの暇さ加減だった
いつもどおりの門番と見張り番のやることもない、ただ立ちっぱなしの仕事。城門が開いている時間帯にしか俺達が忙しい時間はない。
ゆえに……要点をまとめれば暇で死にそうだったってことだ。ただ荒れている地を見ているだけ、そんなときだった。俺の目に見たこともないような服を着て、フードで顔を隠した男が飛び込んできたのは。
あからさまに怪しい奴だった。見たこともない服もそうだったが、この広大な荒野の中、傭兵をつけているのでもなく、商人と一緒の馬車に乗っているのでもない。一人で歩いてきたのだ。怪しくないわけがない。自分の中で警戒心がわいてくるのがわかったが、同時に久し振りになにかできるかもしれない仕事に喜んでいる自分がいることにも気づいた。
よしっ、あいつがなにか変なことをしたら速攻で注意してやろう。そう思いながら男を注意深く観察していると、さっそく男は城門の前に立ち、ノックをし始めた。
一体なにをしているんだあいつは。
「もしも~し、宅配便で~す!」
なんか変なことも叫んでいる。そして自分の行動に城門から何の反応もないことがわかったのか、今度は急になにかを考えるように唸り始めた。
まぁいい、とりあえずあいつは不審者だ。確定だ。声をかけなければ。
「おいッ、お前一体なにをしているッ!!」
side???
「うおっ」
思わず声をあげてしまった。なんだ?今の声は、どこから聞こえたんだ?そう思いながら俺は周りを見回してみるが、岩山に枯れ木、首が痛くなる城壁だけで声が聞こえそうなものはひとつもない。
「おいッ!キョロキョロしてんな!こっちだこっち!」
どうやら上から聞こえてくるようだ。城壁の上のほうを後ろに下がりながら見ていくと、来た時は気づかなかったがなにか見張り台のようなものがある。そこに人らしきものがおそらくいた。いやだって高すぎて見にくいってあれはさすがに
「そこで待ってろ!今そっちに降りる!」
こっちに降りてくるみたいだ。しかしいや~そっか~見張り台か~そっちか~その発想は無かったわ~
しばらく待っていると城門の片側からちっさい扉が開いた。へえーそんなところに扉があるとはな、またもや気づかなかったわ。そしてそこから先ほどの人らしきものが出て来る。というか普通に兵士だ。
「で、お前誰だとっとと言え。」
「何者かと言われてもな、人間ですけど?」
当たり前のことを言ってみる。
「そんなん見ればわかるわ!!俺が聞きたいのはお前の名前と城門が開いている時間帯じゃないのにどうしてここに一般人が一人でいるのかってことだ!」
「だよな。ああ~俺の名前はロイだ。そう呼べ。」
「ロイ……だな?ん~と、それだけか?本名かそれ?」
兵士は手元のボードみたいなものになにか書きながら、そう聞いてくる。まぁそれはそうだ、名前だけで言えば当然そうなる。だが俺はいわないけどな。
「そうだ、そういうふうに書いておけ。それでここにいる理由のほうだが、…………わからない。」
少し考えてそう言った。こいつに本当のことを言ったところで、なにもわからないだろうと思ったからだ。
「わからない?どういうことだよそれ。」
「別に俺は危険な奴じゃないし、怪しい奴でもない。検査してくれても構わないが、旅人にでもしておいてくれ。」
「いや、普通に怪しいんだけど、なんか魔法とか使えそうだし、……まぁ検査してもいいならそうしとくけど。」
「ああ、そうしてくれ、それよりアンタこそ名前は?」
「俺?俺はここの見張り番と門番をしてるドルド・ダーティスっつーんだ。ロイっていうんだっけ、よろしくな!」
「ふ~ん、ゴルゴ・マンティスか。……よろしく。」
「いや違~よッ!!ドルド・ダーティスだからな!なんか強そうだけども!」
ドルドか。ノリツッコミはなかなかいいね。会話しながら、俺はドルドから持ち物の検査や、よくわからないが魔力調査らしきものを受けた。怪しいところは特にないらしい。これでとりあえず中に入れるようにはなるだろう。ふぅ~ようやく国に入れるぜ。力づくで行かないでマジで良かった~~
「よしっ中に入ることは認めてやるが、あまり目立たないようにな、それでなくともお前は見たこともないような感じの服なんだからよ。変なことして絡まれたり、警邏隊を怒らせんなよ?調べられてお前入れたのバレたら怒られんの俺なんだから。」
まったく、ヘタレなドルドだ。まぁこの程度の検査で入れてくれるのには感謝してるから一応は目立たないようにするけれども、たぶんバレないっていうのは無理だ。俺、ここにいる理由を聞くために王様に会いに行くと思うし。
「あぁ~はいはい、わかったわかった。ありがとうなドルド、じゃあまたどこかで会えることを願っているよ。」
そう言いながら、俺はせかせかと城門の小さな扉に入っていった。
sideドルド
「なんだそりゃ?ったくロイ、お前ちゃんと聞いてんのか……………って!居ねぇ!」
どうやらロイはとっくに中に入ってしまったようだった。もう少し注意を聞かせてやろうと思ったんだが、バレたら困るし、……しっかし不思議な奴だったな~見たこともない服だったし、だけどこれでまた超絶暇になっちまうな~あぁ~やだやだ。
そう思いながらまた見張り台に戻ろうとした時だった。俺はハッと思い出す。
「そういえばあいつの顔見てねぇ………ッ!!」
オーディオ王国に上手く入国したロイを迎えたのは、たくさんの人々が行き交い、賑やかな喧騒が響き渡る城門前広場の光景だった。
「へぇ~これはまたなかなか賑わっていることで。」
ロイは発展している街並みに少し感心しながらも広場の向こう側にあるトラックが4台並んで通っても大丈夫そうなとても広い通りを中央通りなのだろうと当たりをつけ、歩き始める。ふと少し上を見上げると遠いが城らしきものが見えた。どうやら目的地はあそこのようだ。しかしロイはすぐに行くことをやめにした。このまますぐに行ってもよかったが、まだ自分はこの国、そして世界に来たばかりだ。今は何でもいいから情報が欲しかった。それに腹も減ってきたので、腹ごしらえのあとに行っても別にいいだろうとロイは思った。
中央通りの両脇には店や屋台がたくさん並んでいた。そのなかで香ばしい匂いが漂ってくる屋台を見つけロイは近寄る。すると店主であろう人物が声をかけてきた。
「おっ、どうだい!そこのお兄さん!うちのテルーダの照りやき食べていかないかい?」
見てみると、鳥肉のような感じだった。美味しそうなタレでジュウジュウと焼けている。一瞬にしてロイの食欲はそそられた。
「ああ、ぜひ食べてみてぇな。オッサン、金が無ぇんだがこれでもいいか?」
ロイは自分の持っている金が通用しないかもしれないことを思い出し、代わりにいつも持っている金の小さな塊を取り出し店主に見せる。
「そりゃあ金かい?金を持ってなくて、金を持ってるなんて変な人だね。でも別にいいよ。そんだけあれば十分さ。」
ロイは屋台の椅子に座り、肉をもらった。なぜか5切れ程度あるが、どうやら金の分だけくれたようだった。
「んぅ~うまそうだ。んじゃ喰らいますか!」
sideロイ
「なかなかいい味してるな!、オッサン!」
「だろ~?このタレを作るのには苦労してるんだ。うまくなきゃ困る。」
俺は腹を満たしながら、このオッサンに何を聞くか迷っていた。下手なことを聞けばこの世界の常識を知らないことがバレるかもしれないからだ。とりあえずさっきも使った旅人という設定を使って、この国のことを聞こうと思った。しかし
「なあ、オッサ「アンタ、ここらじゃ見掛けない格好してるけど、どこの人なんだい?ほら、さっきっから周りの人達に見られてるぞ。」
「あん?…周り?」
オッサンに言われたとおり、周りを見てみる。すると、確かにこの広い中央通りの大多数の人々が俺のことを珍しげに見ている。
「あぁ~……………そんなに俺の格好珍しいか?」
「ああ、モチロン。周りの奴らの格好を見ればよくわかるだろう?」
まぁ確かに俺の格好は珍しいかもしれない。白のジーンズに、上はシャツに羽毛付きフードの黒のジャンバーを羽織っている。現代の若い奴っぽい格好だ。それに比べてみると歩いている奴らの服はなんというかこう地味でシンプルだ。鮮やかなドレスや動きやすそうなスーツっぽい服を着ている者もいるが、あれはおそらく金持ちだろう。あとはほとんどが庶民的な服だ。やはり俺の服は生地も違えば、色も色なのでよく目立つ。よく考えればわかりきったことだったが俺は外見なんぞ気にしないので今まで気づかなかった。顔もフードで隠しているのでそれも原因のひとつなんだろう。
「まぁいいじゃねぇかそんなことは。気にすんなよ。な?今さっきこの国に来たぱっかなんだ。仕方ないだろう?」
「今さっき?今日は門が開く時間は過ぎたんだが…………まあいいか、じゃあやっぱり旅人なんだね?」
「ああ、そのとおりだよ。オッサン、それでな聞きたいことがあんだよ。」
「うん?なにを聞きたいっていうんだい?」
「えっとな、この国の………………
俺が改めてオッサンにこの国のことを聞こうとした時だった。
「ここで止まれッ!!」
後ろからゾロゾロと列をなす音が聞こえた。
すみません、最強ぶりは次話、必ず次話に書きます。だからこの俺のバカたれめ。ということで主人公の名前と格好がわかった第二話でした。