お姫さまと求婚と王子様
私は大国夜来の第3王子 として変わった両親と更に輪をかけて変わった姉兄達に囲まれてこの世に生を受けた。
やはり個性の強い弟妹達も私の後に生まれ、私は本当に賑やかな家族と共に生きてきた。
だがそれが永遠ではないと思い知ったのは1番年の近い妹で家族全員が猫可愛がりしていた凪が苑に嫁いだ時だった。
(その結婚に色々裏があり、凪の結婚生活一年目がかなり悲惨なものだったと知り、そあと勃発した苑でのゴタゴタが片付いた後、全てを聞かされた私たち(一部例外あり)は夜来王族の家族会議(娘婿?要参加)を開催したことは言うまでもない。え、結果?あはは)
可愛がっていた凪が嫁いだことで私達は物凄く、凹んだ。
凪に会うことはおろか近況すら録に教えてもらえなかったのだ、兄弟全員、様々な手を使って凪のことを知ろうとしたがそのどれもか父に叩き潰された。
あの時ほど父の暗殺を本気で考慮した時期はなかったよ。
凪が嫁いでからのこの数年、色々ななことがあるべきところに納まった今、私は寂しさを覚えていた。
家族が家族であることにかわりはない。だがやがてそれぞれの道を歩いていく。
嫁いたり嫁を貰ったりして己の家族を形成していくのだ。
それを最近強く感じる。
「おお!彼方いたいた!」
軽やかな声とともに現れたのは騎士の服を着た黒髪の自分によく似た少女。
自分より下に見えるがこれでも姉・・・・しかも王が王太子時代に生まれた第一子である。
年齢を公表するとご自慢の鞭が飛んでくるので言わないけどね。
「何か用ですか。姉さん」
1番上の姉はからから笑いながら父が呼んでいると告げた。
「何の用なのでしょうか?」
「あたしが知るわけねぇ」
興味がなさ気に言い捨てると姉はヒラヒラ手を振りながらさっさと歩み去っていく。その後ろ姿を見送りながら私も歩きだした。
それが、運命の転換期だとは知らず、父からの命により私は王の名代として海華へと向かうことになった。
そして海華で私は珍妙な存在と出会うことになるのだ。
海華の二ノ姫。私を生涯に置いて退屈させず、私の顔に惑わされることもなく、正面切って「性悪がぁ!」と罵り、全力で逃げ、手をだせば噛み付いてくる女傑であり、なによりもいじれば面白い反応を返し、実に私好みの泣き顔をする女性である。
「二の姫。いい加減、私に名を明かしてはくれませんか?」
「絶対に嫌です!」
私の何度目になるかわからない求婚に二ノ姫はその深い水の底を思わせる瞳に涙を目一杯にためて、プルプル震えつつも私を威嚇するように睨みつけてくる。
………………………………………………イイ
彼女は何処まで私のツボを押しまくるつもりなのだろうか?
破壊力満点の攻撃に私の理性が多大な被害を受けた。
「…………ひっ!」
怯えたような悲鳴ごと抱き寄せて色々(内容はご想像してください)したら「セクハラだ〜〜!!」と泣かれ、叫ばれ、全力で暴れられた揚句に殴られた。
愛故の言動なのに酷い仕打ちだ。
まぁ、泣き顔も堪能できたしよかったかな?
…………笑顔も見たい気もするから夜来のお菓子でもあげようか。
そこまで考えて、ほんの少しだけ照れ臭くなったのは私の生涯の秘密だ。
書いていて思ったこと。「彼方殿下、思考(嗜好でも可)が変態だ!」
最初はここまでするつもりじゃなかったのに………普通のちょっと俺さま敬語王子様なはずだったのに………気付けば泣き顔がツボにきて理性を崩壊させる変な王子様がいました。
あ、王子様と〜の方を先日修正加筆しました。改行などしたので読みやすくなっていると思います。少しですが加筆もしているのでお時間がある時にでもお読みくださったら嬉しいです。
今、構想している話でこの二人の子供の短編があるのですが………娘にも残念美形とか言われてました。彼方殿下。




