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希望

 優雅なティーセットが並ぶテーブル。カティは喉まで出かかってる「急いでるんじゃ」という言葉を必死に止め、目の前でこれまた優雅にお茶を飲むアネルマを見ていた


 「カティどうした?美味しいぞ?」

 「は、はぁ…頂きます」


 ここがどこかもわからず事情が掴めないカティには言われるがままにお茶を飲むぐらいしか出来る事は無かった。言われたとおりカップに口を付けた途端懐かしい香りがカティの鼻に届いた


 「これ…」

 

 それはカティがいつも畑で入れていたお気に入りのハーブティだった。


 「この茶はよい。気分を安定させて脳をはっきりと動かす事が出来るからのぉ」

 「……ぅっく」


 このお茶をカティがテロや五帝と飲んだのはそんなに昔の話じゃない。あれが当たり前の日常だとカティはそう考えていた。今になってそれがどれほど幸せだった時間で、取り返しのつかない日々だったかと考えると涙が次から次に溢れてくる


 「カティ…」

 「す、すみません…何か色々思い出しちゃって…」


 アネルマはカップをソーサーに戻すと、そのままカティがカップを握る手をそっと上から覆った


 「…そなたは既に死んでおる」

 

 カティはあのアウノと話した時に死を覚悟していた。いや、そのつもりだった。だがそれを誰かに告げられたショックは抑えられる物ではなく、手が震えるのを止める事は出来なかった。頭の中に浮かぶのはテロとの思い出ばかりで、そんな中カティが願うのは「どうか…彼が生を選んでくれますように…」それだけだった


 「私は……どうなるのでしょうか?」

 「うむ。質問を質問で返すのは作法に反するがあえて問おう。そなたはどうしたい?」


 『死んだ』後で何が出来るというのか…生まれ変わりなのだろうか?カティはアネルマの言った言葉が上手く処理出来ない。そんな戸惑いを察しアネルマが言葉を続ける


 「人としてのカティは死んだ。じゃがまだ生きておる」

 「よく…意味が…」

 「『魔薬』あれを飲んだ瞬間に、其方の魂魄は完全なる人の部分と銘を宿した部分とに二分され一方に天帝の銘を封じ込めたのじゃ。だから表に銘の力が出る事はなくなった。凄い物を作ったのぉ…こんな事になったのは我が銘になってから初めてじゃった。まぁ人に宿されたのも初めてじゃがのぉ〜ふぉふぉ!」


 アネルマは重要な事を語っているとは思えない軽い口調で言葉を進めていく


 「多分波動の力を抑え込もうとして魂魄自体を二分してしまうんじゃろうな…。ちなみにしばらくするとこれは元に戻る様じゃ。昔飲んだテロの魂魄は一つに戻っておるからのぉ。それが其方が言っておった効力が切れるということじゃろうなぁ…。で、其方はアウノじゃったかの…あれに会う直前に薬を飲んだ事によって綺麗に魂魄が二分されていた状態じゃった」

 「…つまり、私が死んだのは一方の魂魄だった…?」

 

 カティの言葉にアネルマは肯定の言葉は口にせず、にっこりと微笑んだだけだった


 「…じゃあ…私…」


 カティは次の言葉を期待してしまって怖くて口に出せない。アネルマはそんなカティにゆっくりと頷きながら言った


 「生き返る事は可能じゃ。ただし」


 カティは何事も受入れる覚悟でアネルマの次の言葉を待った

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