理由
え〜…カティが酷い事になってます。
苦手な方は読み飛ばして下さい
カティは既に大量の血を失っていた。意識を保つ事が出来るのも後少しだと自身でわかっている。マジュリュリアは確実に成長し、今や部屋全てを覆いつくしカティも顔がかろうじて出ているぐらいだった。
「あう…の」
「おや?まだ喋る事が出来るのですか?さすが天妃様ですね」
カティの頭上には今にも花開きそうな大きな蕾があり、アウノはそれを見て笑みを一層濃くする。
「こん…な事して…テ…ロ裏…切って、貴方…の…目…的は何?」
「裏切り…ですか、そうですね。しかし長い目を見ればこれは陛下の為になります」
「…あ…たしを…殺…す事が?」
カティは何かに必死になっていた。こんな時だがカティの頭の中には妙に冷静な科学者の自分がいて、それはここで死んでしまうだろうと告げていた。だが…彼女は無意味な死は嫌だった。せっかく命を掛けるのだから何か意味のある事を残したい、その気力だけが彼女の意識を保たせている力だった
「…そうですね。天妃様を殺す事も含まれますが、それよりも天界の古い化石のような考えを持った者達を一層する為という方が大きいでしょうか?その為に貴方に生贄になって頂いたんですよ」
「ふる…い、か…せき?」
「えぇ。三界全てが安全に行き交うようになった今でさえ、神族至上主義がのさばっていますからね。筆頭として名を挙げられるのが母の父です。長老という立場にいながら彼は今でも人を蔑み続け、天界と地上の不和を率先して呼び、最終的に陛下達が多大な被害を被っている。ですので今回の天妃誘拐の責任を全て彼に取って頂きます」
「…テミ…セヴァ…長…老」
カティは自分が天界に嫁いだ時に、一番憎悪の視線を向けていた相手を思い出した。形だけの敬意の礼…瞳に宿る侮蔑の感情を隠せない人。色々と(暗殺未遂も含め)仕掛けて来た相手も彼であったとカティは認識していた。
「えぇ。彼がどんな無理な事を言ってもあれでも一応力のある筆頭長老なので陛下も理由も無く裁く事は出来ませんでした」
そういえばどの方法でも絶対に尻尾を掴ませず巧妙な手口ばかりを使って来た嫌な相手だった、しかも長老としても人族を苦しめる事しか考えていない身勝手な発言ばかり言っていたと思い出しただけでカティの眉間に皺が寄る
「ですが向こうは嫌がるかもしれませんが僕は彼の孫ですからね。今回の件を彼の手によって全て計画された事だと証拠を山ほど残してきましたので言い逃れは出来ません」
「……絶…対に…糾…弾出来…るの?」
「もちろん」
今までの天界での彼の行為も許す事は出来ないが、カティはそれ以上にアウノから聞いた話によって初めてテミセヴァ長老に殺意と言うものを感じた。人への無差別殺人…、きっと叩けばもっと色々な事が出てくるだろう。
「…なら…まぁ…いい…わ」
「天妃様?」
「……アウ…ノ、逃げ…て…」
「…何を仰っているのですか?」
アウノはまさかカティから逃げろと言われると思わず愕然とした表情をしている。
「貴…方、テロに…殺さ…れるつ…もりで…しょう?」
「………」
「そん…な事…許さない…」
カティは朦朧となった視線をアウノに向け言葉を続ける
「テロは…きっとあたしが…死んだら…貴方を…殺して自分も…死んでしまう」
「………まさか」
カティは確信していた。テロは絶対に自分を追って死を選ぶ事を、だから全てに絶望した時も安易に自分の命を断ったり出来なかった。しかも今は考えるだけでも五帝を含めて他にも多大な被害が出る危険性がある。
「…何年…テロの…側にいた…のよ…」
「………」
でも、もう自分は今更どうしようもない…ならば…
「……貴方が……テロの…生きる…理由になるの…。彼は……き…っと…何処までも…追い…かけて、貴方を…殺す…わ。絶対に…彼につ…かまらない…で逃げ…切って…、それが…貴方の……テロに…対する……罪の…つぐ…ないよ。」
「貴方への罪…とは言わないんですか…」
「…いい?あた…しは…貴…方に殺され…るん…じゃ…ない。こ…れが…自分…で選んだ…道よ」
そう…それが例え強制的な事であったとしても、最終的に受入れたのは自分自身だとカティは思いアウノに向かって最後の力を振り絞って笑いかけた。
「陛下への…罪の償い。それもいいかもしれませんね…」
「なら…ば、早く…いき…な…さい」
そう言うとカティの意識は途切れた。蕾はもうすでに花開き始めている
「貴方は神族でも無いのに神のような人だ…。私は選択を誤ったのかもしれませんね」
アウノはそういうと闇に乗じて姿を消した
…カティ死亡フラグが立ってます。
さてさて…どうしよう?