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静かなる怒り

 テロはヴェイニを見据えながら立ち上がり、今まで腕の中にあった者からカティの指輪を外すとそれを投げ捨てた


 『…で、どうす…』


 話しかけようとしたヴェイニがテロの顔を見た途端に言葉を無くす、それはその他の者を寄せ付けない神々しいまでの神の顔。


 「少し、おいたが過ぎますね」

 『……』


 波動ではなくテロ個人が纏う空気によってヴェイニはまだ言葉を発する事が出来ない。纏う空気が変わると口調も変わりヴェイニも見た事が無い審判を下す神がそこにいた


 「いくら私でも、許容範囲という物がありますよ。アウノ…」


 テロはアウノがカティに天妃を辞めるように進言していた事も知っていた。しかしそれはカティを思っての事だと理解していた。半人族という似た立場によってカティの事を守ってくれているのだとそう考え、地上にカティが戻る事も許可した


 『テロ…』

 「さて、お仕置きの時間ですね。ヴェイニここの結界はどれほど持ちますか?」

 『あぁ?馬鹿にすんなよ…』


 態度は大きいながらも瞳は不安げに見つめるヴェイニに「そういえば、昔からこういう天の邪鬼な態度が可愛かったな」と思い出してテロはフッと笑って返す。


 「大丈夫ですよ。今さっきの暴走のような力など出しませんから」


 そういうとテロの頭の中に天界で地上の安定をはかっている五帝が浮かんだ。「きっと、今の私の力で誰かはやられているでしょうね…」とテロは苦笑しながら考え、それらを考えられる自分に冷静さが戻って来たと判断した。


 「では…行きますか」

 『行くって…カティが何処にいるのかわかってるのか?』

 「この世界に私から逃れられる者などいませんよ」

 

 そう言ってヴェイニに振り向いたテロの顔は笑みを浮かべていたが、瞳は決して笑っておらずそれだけで向けられた者を燃やしつくしてしまいそうな熱さを含んでいた。そしてその視線で固まったヴェイニから意識を外し、目を瞑り、三世界全ての気配を探る為、精神を統一させる。


 「地上にはいない…。……魔界…いない。……天界…にもいない?…という事は…やはり時の歪み…」

 

 地上と天界の間には時の流れの違いによって歪みの空間が存在しており、それが『時の歪み』と呼ばれる場所であった。この空間は天帝の支配する世界ではなく、転移術によって移動する者達は本来その空間の存在すらも認識する事が出来ない。しかし禁術と同様にその存在は天帝・魔帝にのみ引き継がれ、直接手を下す事は無くても、常にその存在を意識しなくてはならない場所だった。


 『時の歪み…だと?』

 「ええ。どうやらアウノはカティを連れてそこに居る様です」

 『何て事だ…あそこに人のカティを連れて行くなんて…』

 

 ヴェイニが唇を千切る勢いで噛む。


 「大丈夫です。魔薬で抑えられている身とはいえ、カティは天帝の銘を持つ者。多少の時空の歪みには耐えられます」

 『そもそも…お前がカティを天妃なぞにす』

 「時間がありません。私は行きます」


 『するからこんな事になったんだ』と言いかけたヴェイニの言葉を遮り、テロは空中に界を跨ぐ陣を描く。そして手を唇にあて、呪を唱えた。陣が力を注がれ光輝き、テロを包みこんで行く


 「ヴェイニ、あなたはもしもの時の為に残って下さい。魔帝としての役割を…」

 『はぁ?お前…何ふざけて…』


 ヴェイニの言葉が終わる頃にはテロの姿はすでに陣と共に消え去っていた


 『お前も天帝だろうぅがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』


 何も無くなったカティの畑にヴェイニの言葉だけが響き渡った

ヴェイニは結局お留守番。

損な役回りは昔から(笑)

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