閑話 地帝ウーゴ 真逆の真実《それ》
一生懸命にカティが汗水垂らして農作業に明け暮れている頃。
お互いの属性があるので五帝は一つのテーブルでそれぞれ決まった位置に着く。
丸いテーブルに地帝、水帝、風帝、雷帝、炎帝の順番に座る
「いつ見てもカティは可愛いわ〜」
そう言ったのは豊満な身体を隠す事なく紅い衣装に身を包んだ妖しい香りの漂う炎帝アデライド
「もう何て言うんだろう?食べちゃいたい?」
そう言うのは癖のある白髪の髪と大きな瞳を持ちぬいぐるみのように愛らしい雷帝シルヴォ
「とびきり甘い禁断の果実の香りだな」
同意するのは長い足を優雅に組み、青い髪と紫の鋭い視線を眼鏡で中和している風帝マティアス
「うふふっ禁断の味ってそそられちゃう」
まるで中世の人形のような金髪に青い瞳の水帝カンデラの潤った唇に舌がちろりと見える
「ストップ!それ以上は危険区域!これ以上結界が増える様な事言わないように」
暴走しそうになる彼らを止めるのは、茶色の髪に同じ色の瞳を宿した安心感を与える地帝ウーゴの役目だった
そんな時彼らの視界に畑の中のカティが「ふぃ〜」と曲げていた腰を伸ばして額の汗を拭う仕草が見えた
「萌えるわ〜」
「可愛すぎるぅぅ」
「連れ去りたいな」
「お姉様〜」
一斉に上がる声にウーゴは頭を抱えたくなる
「お前らなぁ〜」
ちらっとウーゴがテーブルの周りを見渡すとそれぞれの従者が控えている。
こんな五帝の会話を聞かれてはまずいと思って咄嗟に張った結界が効いているのか、さきほどと同じように佇んでいるのを見てほっとウーゴは息を吐き出した。
従者のそれぞれの瞳が熱い視線を発してテーブルを囲む神を見ているが…それは会話とは関係ない物。
五帝は何と言っても天界での憧れの的であり、自分が仕える主人以外の帝を見る機会などそうはない
しかし五帝が揃った時の波動は凄まじく、普段からそれぞれの帝の波動を浴びている彼らなので立っていられるが、普通の従者ならばすでに失神しているだろう
いやこうして常に側にいる従者でさえ五帝が揃った波動にはウーゴが張った結界無しでは耐えられないだろう
ただそんな従者達の心配をしているのはウーゴだけで、後の四帝は気にもかけない。
そんな彼の苦労も知らず、四帝の視線が一気にウーゴに向けられる
「忌々しいわ…あの結界」
「あれのせいでボクらカティに近づけないんだもんね〜」
「無理するとカティを傷つけてしまうからな…」
「もっとお姉様に近づきたいのにぃ」
実はカティの周りには彼女を中心に半径1メートル程の強力な結界が張られている
もちろん四帝が破れないほどの結界を張ったのは、同様の力を持ったウーゴその本人である
「天帝の勅命なんだから仕様がないだろ?」
守護に関して地帝を上回る力を持つものは居ない。
そしてそれ以上に彼らを縛るのは『天帝』というその二文字。
「「「「うぅ」」」」
四帝のそれぞれの顔を見てウーゴは思わず苦笑してしまう
そして彼自身も『天帝』という言葉に縛られている
カティの周りに結界を張ったのはウーゴだが、しかし彼もカティ自身には触れる事は出来ない
四帝はウーゴが彼らに対してカティの周りに結界を張っていると思っているが、実は真逆な『真実』。
それは身に纏う薄衣のようにカティの周りにある『真実』
彼女に関するものは髪一本誰にも触れさせないという意図が明白な『真実』
五帝ですら瞬時に消してしまうであろう恐ろしいほどの『真実』
彼女自身纏っている事を気付いていない『真実』
「全く恐ろしい神だ…」
呟いたウーゴは先程までとは違う少し強ばった表情をしている
そんなウーゴの表情をカティに夢中な他の帝には気付かない
天帝に従いし五帝その中でも最も古株の地帝ウーゴ。彼は平和を望み、そして四帝を大事な仲間と大切にしている
『全てを守る』
その為の少しの誤解。
「ウーゴの馬鹿」
「雷獣飼ってみる?」
「風剣の餌食になるか?」
「ウーゴ兄様なんて大嫌い」
そうして彼は今日も四帝の嫉妬を受ける。
彼らを守れるなら些細な事。
にこりと彼らと戯れ言を交わす日常。ウーゴはそれも幸せに感じるのだった。
でもそんな優しいウーゴだからこそ役得があり、カティが彼だけには気を許す時がある。
カティの気分によって真実は臨機応変に対応するらしく、
ウーゴだけで畑を訪れた時にはカティが特別な極上ハーブティをいれてくれるのだ。
「ま。役得だな」
ウーゴが呟いた言葉に本当の意味は知らない四帝がそれぞれ「きぃ〜!!」と怒りを表しているのを彼はやっぱり笑って見守るのだった
地帝ウーゴの話です。彼の名はウーゴ・アルヴィン・シェーブロムと言います。
五帝の中で一番お兄ちゃんです。
そして一番の平和主義者です。
うん!五帝の掛け合いを書くのは楽しい!!
ってかまだ出てこない天帝テロのイメージが(苦笑)
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ありがとうございますvv