再会
光の力が強く、白となった世界はテロと彼に抱きかかえられた者以外の全てを飲み込み、カティの畑だったそこがどんどん無と化していく。
「カティ…カティ…」
テロに抱きかかえられた骸はどんどん朽ちる。彼はそれを止める術もわからず、ただ抱きしめ、涙した。そしてそれが朽ち果てる瞬間テロの中に違和感が生まれる。茫然とした中で彼自身にもわからない何かが必死に頭を働かせようとしている
「…?…何故…」
テロは目の前に骸を見て、もともと天帝の銘で延命していた命なので、骸が銘の消失と共に身体が朽ち果てるのは理解出来た。だがある一つが決定的に足りないと感じた。カティの遺体であったならば朽ち果てる際に香る物がそれにはなかった。
「…魔薬」
魔は一度本体に接種すると必ず何らかの香りを残す。カティの身体には魔薬から接種した魔の香りが肉体に染みているはずなのに、この骸にはそれがなかった。
「これは…カティじゃない?」
周りの光が徐々に正気を取り戻すテロの中に戻る。収縮する光を身に治めながらはっと自分が暴走状態にあった事を理解した。そして慌てて周りを見渡して被害状況を確認する。地上全てを無にしてもおかしくない暴走。しかし、被害は思った程出ておらず半径2km圏内の物を全て消失した程度だった。これならばカティの敷地内で他に害は出ていないだろうとほっと安心して息を吐き出す。しかし力を抑えていない自分の暴走に対してこの被害は余りに少なく疑問が残る
「…?これは…?」
『正気に戻ったか…大馬鹿者め』
聞き慣れた声が頭上から降り注ぐ。見上げると空中に浮かぶ人物は逆光で影しか見えなかったが、それは良く知った人物だった
「…ヴェイニ」
『テロ久しいな…。全く太陽のような波動が爆発したと思ったら…お前だったのか…』
『まぁ…だいたい予想はしていたがな…』とぼそりと呟き。ヴェイニはテロの側に下りる。テロが覚えているヴェイニはまだ幼さの残るカティと一緒になって遊ぶ少年だったが、久しぶりに見た彼はもう青年も通り越し、熟成された魅力の持ち主となっていた
「という事は…これはヴェイニが?」
『ああ。あのまま放置していたら魔界まで消滅させられかねなかったからな。カティの敷地に置いてあった魔具の緊急装置を作動させて結界を張った』
「いつの間にそんな物を…」
『お前が幼少の頃波動の暴走でカティの屋敷に滞在している時があっただろ。その時に何かがあった時の為に一応設置しておいた物だ』
100年以上前の魔具に助けられたと知ってテロは目を見張った。
「よく動いたな…」
『俺が作った物だぞ。半永久的な遠隔操作可能の装置に決まっているだろうが。カティが地上に降りてからは動かす為の波動もここには大量にあったからな』
そういえばこいつも『魔具の天才』と言われていたとテロは今更思い出す。
『そんな事はどうでもいい。お前がそのままの力で降りて来てるという事は大気の安定は五帝がしているのか?』
言葉を出さずにテロが首を縦に振る
『緊急事態か…何があった?ネストリから聞いた話ではカティと交信が出来ないそうだが?』
「…わからない。ただ、カティが何者かに連れ去られた事だけは確かだ。外れる筈の無い主従の指輪が外されてる事を考えると…」
『古の禁術か…』
「…ああ」
『誰か犯人に心当たりはあるのか?』
ヴェイニの言葉にテロの口がぎゅっと引き締まる。『古の禁術』それは天帝・魔帝のみに伝承される書物の中に存在するもの。自分の側でそれを閲覧出来る可能性がある者はおのずと限られてくる。
『…まさか…あいつが…』
テロの頭に灰色の髪をなびかせ緩やかに笑う人物の顔が浮かんだ…
え〜。カティとテロとヴェイニの関係ですが、書ききれてませんね(汗)
テロが一番年上で、次いでヴェイニ、一番年下がカティです。
一時期三人とも地上にいた時期が重なったので、いわゆる昔なじみです(幼なじみはカティとヴェイニです)
さて次回は連れ去られたカティの行方ですよ〜!
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