切迫
事件が起こった時、テロは天界の各国を治める領主と順番に謁見室で謁見中だった。『魔薬』の期限が迫った中でカティの邪魔をしないようにと畑に降りるのを控えていた為機嫌は最強に悪く、くだらないおべっかを並べる相手に殺意を抱く事も屡々、手持ち無沙汰で手の中の扇を開いたり閉じたりで誤摩化していた。そんな中パキンッという嫌な音が頭に響き、思わずテロは手にしていた扇を二つに折ってしまう。そのテロの行為に領主は「ひぃっ!」と自分に責があったのかと動揺した。
「ウーゴ」
側に控えていた五帝の中でウーゴも同時に反応を示していたのを視界の隅で確認した。すぐにウーゴが玉座に座るテロの側で膝をつく
「お前も感じたな…」
「はい陛下…天妃様の結界が…」
ウーゴの言葉を全て聞く事無くテロは玉座から立ち上がる。まだ怯える領主に対し言葉を発する
「今日の謁見はここまでとする。後は追って連絡を待て」
「ははぁー」
頭を床に付け、平伏す領主に冷たい視線を向けるとテロは外套を翻し、謁見室を後にした。それに五帝も続く。天帝と五帝によって張りつめていた空気が、彼等の退室によって一気に緩む。何よりもそれに安堵したのは今謁見中だった領主で、テロの冷たい視線によって腰を抜かしその場から動けなくなっていた。
*
テロは執務室に向かいながら必死に指輪の力でカティに連絡を取ろうとするが、一向に向こうからの返事が無い。
「出てくれ…カティ」
思わず出した声に後を歩く五帝にも緊張が走る。誰一人口には出さないが、カティの身に危険が迫っている事を感じ、まるで戦場に立ったかのような空気を纏っている。テロは執務室に戻ると部屋に設置された陣に立った。
「陛下…私達も地上に…」
カンデラが我慢出来ずに言葉を発するが、向けられたテロの視線に言葉が詰まる。その焼け付くような視線に動けなくなったカンデラ。ウーゴがカンデラをその視線から遮断する為に間に立つと背後のカンデラから「はっ!」と苦しげな呼吸が聞こえた
「ウーゴ…私の力を抑えてる暇はない。全力で安定に努めろ」
神族が地上に降りる際の力の半減には長い詠唱を必要とする。波動の力量にも左右され、テロほどの力だと本来かなり時間がかかる。しかしテロはそれを通常の四分の一の時間でこなすことが出来る。だがその時間も惜しいほど彼は今、切迫していた。
「御意。我ら五帝で保てる時間は1時間が限界です」
「充分だ。終わり次第一旦戻る。アウノを捜して領主の方は対応させよ」
「御意」
言い終わるとすぐにテロは転送の呪を詠唱する。詠唱しながらもすでに意識はそこになく、カティの無事だけを願っていた。指輪の返事が無い事に不安が増していく。
「どうか…無事でいてくれ…」
テロが詠唱が終わるとともに呟いた言葉に五帝も祈りを捧げる。そしてテロの姿が薄れるとすぐにウーゴは表にいた警備兵にアウノの件を伝えた。そして五帝はそれぞれの執務室に戻り、各部屋の陣の上で意識を大気の安定に向けた
これまでにかかった時間約五分。
地上では50分の時が過ぎていた。
初めて全くカティが出てきません。
さて…テロは間に合うんでしょうか
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