100年ぶりの再会
早速カティはネストリとユホに『魔薬』の説明を始め、それに使用する魔草がジゾリアス系である事を話した。さすがのネストリとユホも5000種以上ある魔草を短期間で集める事は難しいと語り、沈黙が三人の間に流れる。カティは沈黙に耐えられず思わず仰向けに草の上に倒れ込んだ。
「…打つ手無しかなぁ」
ふぅっとカティとユホが溜息を付く中、ネストリだけが思案顔でカティを見ていた。その様子気付いたカティが「ん?」とネストリに視線を向ける。
『…カティ様、昔兄上と魔の森で知り合ったんですよね?』
「え?あ…うん。そうだけど?」
突然全く頭に無かったヴェイニの事を振られてカティは驚くが、ネストリは手を顎に置き何やら考え込んでいる。「それで?」とカティは思ったがネストリの口から続きが出てこなさそうなので、そういえば昔ヴェイニとこの辺駆け回った、もとい…追いかけ回したと一人思い出す。「懐かしいなぁ」と呟き、回想に耽っていたカティにネストリが話しかけた。
『兄上に連絡してみましょうか?』
「兄上って…ヴェイニ?何で?」
『兄上でしたら、一緒に採った魔草なども覚えているはずです』
「えぇ〜もう100年以上前の話だよ?」
ネストリはカティのその問いには答えず、口元に笑みを浮かべるだけだった。ネストリは脱いでいた外套に手をかけると、その内側から四角いクリスタルの板を取り出した。それを見た瞬間カティは勢い良く起き上がり、立ち上がった
「それ何!?」
『通信機です』
「通信機?」
『はい。これで兄上の執務室と繋がりますので」
「ほぇ〜!魔具ってすごいねぇ〜!」
ネストリはカティの感嘆な声を心地良く思いながら、そのクリスタルを地面に置き静かに口の中で詠唱する。そうするとクリスタルから光が伸び、それらの光が画面を形成した。まだ映像は安定していないのか不鮮明で音声だけが通じた状態のようだった
[…?ネストリか?]
画面の向こうから聞こえる低く響く声にカティは首を傾げる。カティの記憶にあるヴェイニはまだまだ幼さを残した男の子といった感じでこんな低音の響く声の持ち主ではなかった。気がつくとユホとネストリは膝をつき画面に向かって敬意の意を示している。カティだけが立ったままで目立っていたので、横の二人に習おうとしたと同時にクリスタルの映像が鮮明になった
[……カ…ティ?カティ!!!]
その言葉と共に響き渡る打撃音にカティは思わず目を瞑ってしまう。おそるおそる目を開けると、どうやら画面の向こう側の男が壁に激突したらしい様子が見て取れた
『ヴェ…ヴェイニ?』
額を押さえながら画面に現れた男はやはりカティの記憶にあった姿ではなく、多少面影を残しながらも見目麗しい成人男性になっていた。しかし向こうにとってもカティを見るのは久しぶりで、つい確認の言葉が出てしまう
[カティ?カティなのか?]
「うん。久しぶり!元気?」
「…100年以上ぶりでそれは軽すぎるだろ」とその場で膝をつく二人ともが思ったのだった。
[カティ…は変わらないね?]
「そう?そうかな…。ヴェイニは見事に美形に育ちおって…ヴェイニのくせに…」
一瞬側に膝付く二人の空気が凍る。魔帝に対して些細な失礼でも懲罰、もしくは死の洗礼に値する、これは魔族の中での法と言っていい物だった。二人に嫌な汗が流れる
が、言われた本人のヴェイニはとても幸せそうに笑う
[カティにそう言って貰えると嬉しいよ]
優しい目でカティを見つめるヴェイニを見て、「おいおい、最後の言葉を聞いてなかったのか?どう考えても褒めてないが…」と側の二人は思うが沈黙を貫いた
「やっぱりヴェイニだ…相変わらずキモイ!キモすぎる!!」
嫌みが全く通じないそんなヴェイニを見て震えるカティ。
[ひどいな]と言ってまた笑う魔帝を見て、「うちの兄(魔帝)はMなのかドMなのか?」と本気で心配する者が確かにそこに二人存在した。
ヴェイニ登場です。
Mです!ドMです!(笑)
カティ至上主義な魔帝にもう少しお付合い下さい(笑)