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魔の森

カティが地図で確認すると、一番近い魔の森で歩いて約1時間ぐらいの場所だった。

家の敷地にそって張られた透明な結界を出るとカティは自分を纏う空気が変わったのを感じた。


「さてと…行きますか」


カティは誰に言うでもなく呟くと、背の荷物を持ち直して歩き始めた。のどかな田舎道は歩いていても悩み事がそんなに深刻にならずにすんだ。そんな悩みを考えるより時期的に野草が成長する今の時期はカティにとって天国のような時期だった


「メグラシアの花〜!」

「酔い菜の草ももう顔を出してるぅ」

「この夜霧蔓はまだ時期が早いなぁ…」


など一人で叫んではごそごそとその草を採集する姿に村の人もなかなか声を掛けずらく、もし声を掛けても採集に夢中のカティにその声が届かない事も多かった。

そんな寄り道を繰り返してしまい、結局魔の森についたのは出発から2時間以上経ってからだった。



どんよりと日の光が遮られた森は、鬱蒼としていて『魔の森』という名に相応しい感じを漂わせていた。その光景に怯むどころか目を爛々と輝かせるカティ。少し気になるのは魔の森に近づくに連れて頭の奥で『ツキンッ』と覚えのある痛みが走ったが、その程度の痛みではカティの研究欲を失わせる事は出来なかった。


「ふふふっ待ってなさいよジゾリアスちゃん」


明らかに変わる草の感じではっきりとここからが『魔の森』だとわかるそこに、何の躊躇もなく踏み込もうとした瞬間。パキンと何かが壊れた。


「ん?」


もう一歩踏み込むと更にパキン・パキンと壊れる音が耳に響く。足下を見ると鬱蒼と茂っていた足下の草が休息に枯れていく。


「…え?うわっ!!」


カティは慌てて森を出て元の位置に戻ると、自身が踏み込んだ場所を見て茫然となる。そこは彼女が居た場所を中心に1メートル四方が死の世界と化していた。それどころかカティが立っている入口付近の植物もどんどん頭を項垂れ元気を無くしていく。


「な…何で…」


理由はわからないが自分が何らかの影響を与えてる事はわかったので、とりあえず後ずさって森から距離を取る。カティが離れると入口付近の植物はゆっくりと元の姿になった。結婚前に地上にいた頃にはならなかった現象に思い当たるのは一つしかなく


「これ『天帝の銘』のせい?」


『魔』の対極にある『神』。カティは人とはいえ神の波動を身体に宿している、つまり魔の世界には踏み込めない事がわかった。


「…どうすんのよ?こんなの…絶対『魔薬』なんて作れないじゃん…」


カティは目の前にある『魔の森』がとても遠い世界に感じた。ただただその場で森を見つめているカティに突然どこからか声がかけられたかと思うと、首を拘束されて息が詰まった。



『…お前が魔の領域を汚した者か?』

「ぐっ…だ、だ…れっ!?」

『…ん?お前…人?なのに…お前の身体から神族の波動が…』


カティは一瞬首を締める力が緩んだ瞬間に、拘束した者に対して肘打ちを食らわせる


『ぐぅ…』

「ご…ごほっごほっごほっ」


カティは逃げなくてはと思うが、魔に対峙して頭痛が徐々に大きくなってきて身体が動かない。苦しみの中、視線だけを相手に向ける。黒い肌に黒い瞳、漆黒の髪は短くそこから見える耳は尖っていた。


「はぁ…はぁ…あなた…魔族?」

『お前は…何だ?訳がわからない』


また拘束しようと魔族の手がカティに伸ばされるが、その瞬間また目の前の魔族とは別のところから声が聞こえた。一気にカティの頭痛が爆発する


『スト〜〜〜〜ップ!!!』


その瞬間、カティは意識を失っていた

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