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カティの畑

様々な色彩が咲き乱れる庭。

一見不調和に見えるそれは実に見事なバランスで安らぎを与える空間となっていた。

そこに咲く全てが薬草だとは信じられない見事な庭であった。


ただ…ここの持ち主カティ・サトゥ・サルメ・ライタことカティは「ここは畑だっ!!!」と日々叫んでいる。



「…だから、何で毎日ここにくるんですか?」


燦々と光を降り注ぐ空を背景に、野良作業着のカティは目の前で優雅にお茶を飲む集団に声をかける

その集団から光が注がれているのではないだろうかというぐらい神々しい姿をした二人

神々しくて当たり前。なぜなら彼等はこの世界を統べる神達に他ならないのだから。


「だって、ここすごく落ち着くんだもの」


そう言うのは炎帝アデライド。


「そうなんだ。正しくこの庭はパラダイス」


アデライドの言葉に同意するのは地帝ウーゴ

そのいつもながらの返答にウンザリしながら、「いつか殺す」と呟いてカティは止めていた鍬での作業を再開する

しかし神であるこの二人を人間のカティがどうこう出来るはずもない。

しかも神の中でも帝の称号を持つ者達なのだ。


「いつも素晴らしいね。カティの『庭』は」

「地上でこんなに神聖な空気が保たれてるなんて奇跡だわっ!!」


二人はカティに話しかけるのを一向に止めようとしない。

カティは額の汗を首に掛けたタオルで拭いつつ、据わった目で睨む


「ここは畑だと…何度言ったら理解して頂けるんでしょうか?」


いくら据わった目で見られても、長い睫毛に縁取られた黒く大きな瞳は相手を怯えさせるどころか、きゅんとトキメかせてしまうものに他ならない

カティは顔にまとわりつく漆黒の髪を軍手をはめた手の甲で払いながら麦わら帽をきちんと被り直す

その姿を見て神の二人は「くたびれたジャージをこんなに可愛く着こなせるのはカティしかいない!」と、思ったのだった


「いつのまにか農道にテーブルセットは持ち込むわ…。日よけの建物は建つわ…」


俯いてしまったカティの表情は神の二人からは見えなくなったが、鍬を持つカティの手がふるふると震えているのを見ると今日は相当ご機嫌が悪いとわかる


「しかも日々それが増えて今じゃ農作業機械すら通れなくなってるっ!!しかも手伝いの人を雇おうにも何故かここには辿りつけないしっ!!何ですかここは?秘境ですか?桃源郷ですか?」

「だってぇ〜テロ様からのめい なんですものぉ」


アデライドが言ったテロと言う名前にカティの口角がピクンと反応する


「テロ様がここには厳重な結界を張ってるから普通の人は辿り着けないんだよね〜」


カティの口角がピクピクと反応しているが麦わら帽に遮られて神の二人にはみえない

今ここには居ない、だけど原因の元となっているテロにカティは殺意を覚える。

そうこの世界全てを統べるテロこと天帝テロ・アールノ・ポウティアイネンに。


「一回シメる」

「ダメだよ。天帝殺したらこの世界壊れちゃうよ?」

「そうよぉ〜彼のご機嫌は今やカティ次第なんだから」


心の中で「そんな事知るかっ!」と思いつつ、けれど彼を怒らせると厄災が起こる事に思い当たる節がたくさんあるので無理矢理怒りを鎮めてまた黙々と作業にもどる


カティの畑?には日々入れ替わり立ち替わり神々が来訪する。そして今と同様の会話を繰り返すのだ。

カティは神々に『異様に』なつかれてありがた迷惑な思いをしている、どちらかというとついてない人間なのだった

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