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閑話 炎帝アデライド 100億分の1の確率

どんどん下がる一方のテロの機嫌にアデリー以外の帝は彼女に対してそれぞれ抗議の視線を送るが、そんな事では彼女は動じない

カティが天界で過ごした間、一番彼女を見てきたアデリーはどれほど彼女が悩み苦しんだかを知っていた。自身の立場から言葉には出来なくても天妃など辞めてしまえばいいと思っている。


カティが地上に降りる半年前、二人で散歩していた時呟いた言葉が今でもアデリーの耳から離れない。記憶がカティが天界に居た頃に遡る


「人と神族だと子供はほぼ望めないんだって…」

「カティ…」

「今更100億分の1の確率とか言われちゃった」


カティが悩み苦しんだのは天帝ですらどうする事も出来ない自然の摂理。

どんなに侍女や貴族の姫に罵られても気にさえしなかったカティの絶望を含んだ言葉がアデリーの心に突き刺さる。淡々と空を見上げて語るその顔は泣くことさえ諦めた顔で、見ている方が辛くてアデリーは顔を反らしてしまった。そんなアデリーを余所にカティの呟きは続く


「…何であたしは人なのかな?」

「……」


アデリーは掛ける言葉が出てこなかった。神族である自分の言葉はカティの心には届かない気がした。


「くやしいなぁ…」


そう言ってカティが一筋だけ流した涙。

それからのカティはまるで天界とのつながりを遮断するかの様に部屋に閉じこもってしまい、テロも五帝も遠ざけてただ苦しむ日々。


神族でない自分が天妃としての資格などないと思っていたカティ。

妻としての役目も果たせないと知ってしまったカティ。


他の帝は愕然としていたけれど、アデリーは地上に戻ったのは喜ばしい事だと喜んだ。でもそれを知らせた長老達は、カティの悩みも苦労も何も知らずに暴言を吐き続けて五帝の怒りを受けた。


アデリーは早くカティを苦しみから解放してあげたいのに…

自分達神族が側にいると苦しみが続く事もわかっているのに…地上に通う事が止められない。

手に入れたいわけじゃない、ただ側にいたいだけの存在。

天界に戻るとすぐにカティの気配が恋しくなる。アデリーだけじゃない五帝全員がカティに狂っているのかもしれない。


「別の妃を見つければいいのに、でもカティ以外の妃なんて認めない」

「陛下が地上に来なければいいのに、でもカティを天界に連れ戻せるのは陛下だけ」


ジレンマの矛先にテロがいて、アデリーは今日もテロに八つ当たりをする


「アデリー?」


考え込んでいたアデリーにカティが声をかけ、彼女ははっと意識を現実に戻した


「…話しかけても何も言わないんだもん。大丈夫?」


アデリーに微笑みかけるカティの表情は穏やかで、地上に戻った事が改めてカティによかったのだと実感した。これがずっと続くといいのにと願わずにいられない。

願っているが現実にはこの状態をずっと続けられるとは思っていない。たった一年でテロが限界を迎えつつある事も五帝は肌で感じている。他に目を向けてくれるように釣書を送っても目もくれず、五帝以上にテロはカティへの執着を見せる。カティに天界でのような何もかも諦めた表情を二度とさせたくないから、答えを模索しても迷い込むばかりで何の解決も出来ない。


「…どうしてあたしは神族なのかしら?」


アデリーが口の中で呟いた言葉はカティの耳に届く事はなかった

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