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深い愛で見守る

カティとウーゴの会話からしばらくして、天界から地上へと戻ったテロはウーゴからの報告に耳を傾けた。

少し離れた場所にいたカティは二人の周りの温度がどんどん下がっていくのが感じられたが、「僕にまかせて」とウーゴが言った手前動けずにいた


「…ここに残るだと?」

「御意」

「却下だ。カティは連れ帰る」

「陛下、天妃様はあのまま天界にいては精神を病んでしまわれます。一度地上で静養して頂きたいのです」


ウーゴの言葉にテロの美しい顔が歪む。

テロも事が起こる前のカティを見ているだけに、ウーゴの言葉を無下に出来ない。

カティは病み始めてから、まずテロの目を見なくなり、地上では元気すぎるほどだったのにどんどん内に籠ってしまった

伽の際にも前まで愛らしく微笑んでいたのが、最近では何かに耐えるように眉間に皺を寄せている事が多くなった

徐々に自身と距離を置くカティに焦り、彼女が閉じこもる部屋に足繁く通えば更に態度が硬化していく。

テロは為す術がなかった。


しかし、カティを自身から離す事を考えると、想像しただけで身を裂く痛みが襲う


「無理だ」

「…陛下」

「どうしてもというなら、私も地上へ降りる」

「陛下、そんな事をすれば波動の影響で地上がどうなるかわかっていらっしゃるでしょう。それでは天妃様が安穏な暮らしをして頂けません」

「では、私にどうしろというんだ…」

「穏やかに見守って差し上げるのも、深い愛だと思われますが?」


___見守る?側に居らずにどうやって見守れと言うんだ。嫌だっ!カティは私のものだ。誰にも触れさせない!私だけを見つめていればいいのだ!

テロの激しい思いが彼の中に濁流のように流れているが、それを口にするには彼は賢帝すぎた

体中から見えない血飛沫をあげながらテロは考えている事とは逆の言葉を口にする


「わかった、ただし期間は地上時にして5年。それと天界時で一日一度訪問する。これ以上の譲歩はしない」

「陛下…有り難うございます」


ウーゴが腕を全面で組んで深く頭を下げる。

ウーゴから視線を外し、テロはこちらの成り行きを熱く見守るカティにふと目を向けた、そしてカティの身体に纏うものを見て一番の問題を思い出す


「しかしカティが地上に居るには今のままでは問題があるが?それはどうするつもりだ?」

「…は?」


テロは再びウーゴに視線を向けると、彼に解るように手で額を指差す


「あ…」


ウーゴはテロに言われ顔を青ざめた、すっかりその事を失念していたのである


「『天帝の銘』」

「そうだ、我が妃は私よりは劣るがそれなりの波動を纏っているが?」


ウーゴは恐る恐る思った事を口にしてみる


「陛下…『天帝の銘』を消す…」


『チャキン』


いつの間に抜いたのかウーゴにはわからないほどの早さで、テロの剣先がウーゴの喉元に当てられる


「私にお前を殺させるな…」

「申し訳…ありま…せん…」

「ウーゴっ!!」


その二人の姿を見てカティが慌てて側に寄ってくる

ウーゴに抱きつこうとするカティの腰をテロが抱え込む


「テロっ!!!」

「それ以上近づくな」

「じゃあ、その剣納めて!!」


カティの言葉にテロはウーゴに向けていた剣を鞘に戻した

よほど息を詰めていたのかウーゴの身体から力がフッと抜ける


「…ダメだったの?」


テロの腕の中のカティがウーゴへ問いかける。

今の現場を見たからだろう諦めの色が見える問いかけだった


「いえ、期限付きですが陛下は天妃様が地上に居る事を了承して下さいました」


それを聞いた途端カティの顔に満面の笑みが浮かぶ


「ほん…と」

「はい」

「テロっ!!!ありがとうっ!!!」


カティはテロの腕の中で身体を反転させると思い切り首元に抱きついた

テロは久しぶりの妻からの包容に感動しつつ、カティを抱いた腕に力を込めてぎゅっと抱きしめる


「カティ…」


甘く香るカティの首元をテロの唇が辿る。

そのまま先に進もうとした瞬間、「ゴホンっ」とウーゴが咳払いをした

カティの意識がそちらに向くのがわかり、テロはちっと舌打ちをする


「天妃様」

「ウーゴ?」

「しかし今のままでは地上でお暮らし頂くわけにはいかないんです」

「…え?」


妃の波動といえば五帝と同様の力を持つ。

波動を纏った神族は幼少からその力を制御する術を身につけているが、カティは如何せん人間なので自分の中にある波動の制御が出来ない

天界ではあまり王宮から出なかった事と、人と謁見する際にはいつもカティの波動をテロが側で制御していたのである

一通り説明するとカティの眉間の皺がどんどん深くなっていく


「むぅぅぅ。…テロ、これ消してよ」


カティは話を聞きながら額の『天帝の銘』を手で擦っていたので、その部分が赤くなっている。


「駄目だ。それだけは絶対に認めない」


『天帝の銘』を消す。

それは離縁と同様で、そんな事をテロがカティに出来るわけがない、それをウーゴも重々承知しているので無理は言えない。

カティには申し訳ないが、恐ろしくてカティを失った天帝の姿など想像もしたくない。

諦めの空気がその場に充満した時。

カティがテロの腕の中でもぞもぞと動いた


「テロ。ちょっと離して」


最終的にテロはカティが自分の腕の中に帰ってくる事に満足したのか素直に腕の中から彼女を解放する

カティは二人から少し離れた所に立つと、ごそごそと自分の袖の中で何かを探している


「カティ?何をしている…」

「ちょっと黙ってて」

「……」


後にも先にも天帝に対してこのような口調で話せるのはカティだけだとウーゴは側で思う

機嫌が悪くなってないかとウーゴはちらりと天帝に視線をむけるが、そこには優しく微笑む姿があるだけだった

テロにしてみればこの口調こそ、最近のカティにはなかった昔の面影、テロの愛しい人そのものだった


「あったっ!!!」


天帝とウーゴが見守る中、カティは袖から小さな小瓶を取り出した

それを見た瞬間、今までとは一変してテロの表情が消える


「カティ」

「おっと。近寄らないでね」


側に向かおうとするテロにカティは手で牽制する


「それは全部処分したはずだ。なぜ持っている?」

「なんとなく?研究したかったし…」


ウーゴは二人の会話についていけずただ成り行きを見守っている

じりじりとテロはカティの方へ近づくが、カティも同じように離れていく


「渡しなさい」

「や〜だ」

「カティ…」

「これ飲めばきっとあたしの波動、抑えられるよね?」


カティは返事を聞かずに行動した。

瓶の蓋を片手で外し一気に口に流し込む。

天帝とウーゴが一気に駆け寄るが間に合わない。


「っ!!!!」


ウーゴは突如起こった出来事にパニックに陥りカティが憔悴のあまり毒を含んだと思って、慌てて医者を呼びに行こうとしたが、テロに無言で止められる。

落ち着いてみると、目の前のカティは倒れておらずただ眉間に皺を寄せて「うぅぅぅ〜」と唸っている

それと同時にカティの身体から微かに香る『魔』の香り


カティは『魔薬』を飲んだのだった

長くなりました(苦笑)

段々と調子が乗ってきてキャラが動いてくれるようになってきました


…それと同時に最初の方を少し手直しが必要かしら?と考えている今日この頃なのでした


よければ感想など聞かせて下さ〜いvvv

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