王太子から婚約破棄され、実家からも追放された公爵令嬢は、謎の大富豪に拾われる
「お前との婚約を破棄する」
私は婚約者である王太子レオナルドから婚約破棄を言い渡された。
「えええ! な、なぜ?」
「悪いがお前にはもう飽きたのだ」
私は泣きながら家に帰った。
「ただいま」
「おいルイーズ、話は聞いたぞ」と父が怖い顔をしていった。
「お父様、私、婚約破棄されたの」
「なんということをしてくれたのだ、この親不孝者め! せっかくの王太子殿下との良縁をぶち壊しおって! お前のような奴の顔はもうみたくない。この家から出ていけ!」
私はお父さまからどなられて実家を追放された。
荷物をまとめて家を出る。ゆく当てもなくとぼとぼと歩く。涙がとめどなく流れた。
公園のベンチに座って泣いていると、そのうち夕方になった。
「宿屋に泊まらなきゃ」
私は立ち上がった。すると、男の人に声をかけられた。
「おい、お前、なかなかべっぴんだな。俺とよいことしねえか?」
「よいことなんていって、本当はいやらしいことでもする気なんでしょ」
「察しがいいな。大正解だ!」
そう言いながら男が迫ってきた。
「きゃあああああ! 助けて!」
「おい、何をしているんだ!」と誰かの声が言った。
そっちを見ると、そこにはシルクハットをかぶった長身のイケメンが立っていた。
「た、助けてください。暴漢に襲われているんです」
「僕が来たからにはもう大丈夫だお嬢さん」とイケメン紳士は言った。
「おい、かっこつけてるんじゃあねえ。俺様の邪魔をしやがるとボコボコにするぞ!」
「誰をボコボコにするだって?」と紳士は暴漢をにらんだ。
その顔を見た暴漢はハッとした顔をして、
「や、旦那! リチャードの旦那じゃないですか。あなた様をボコボコにするなんて、そんなことするわけありませんよ。あは、あははは、あっしはこのへんでしつれいしやす」
暴漢は一目散に逃げていった。
「お嬢さん、怪我はないか?」
「ええ、危ないところを助けてくれてありがとう」
「これぐらいお安い御用さ。ところで、若いお嬢さんがこんなところをふらついていたら危ないぜ。僕が家まで送ってあげよう」
「私、婚約破棄されて家からも追い出されたから、帰る場所がないの」
「そうか、それだったら僕のところに来ればいい」
私は見ず知らずの男の人についていってもいいものか逡巡した。しかし意を決してついていくことにした。私を暴漢から助けてくれたし、悪い人には見えない。
「ここが僕の家だ」
「ひえええええ! あなた、こんな豪邸に住んでいるの! あなたはいったい何者なの?」
「はっはっは、僕はリチャード。ただの大富豪だよ」
豪邸に入って行くと、メイドが出迎えた。
「おかえりなさいませリチャード様」とお辞儀をしたそのメイドは、恐ろしく太っていた。たぶん体重100kgはあるだろう。
しかも、恐ろしく目つきが悪かった。
「ただいまタチアナ。この子は客人だ。今晩泊まっていく」とリチャードがメイドに言う。
「メイドのタチアナでございます」
彼女は高校生のヤンキーが他校のヤンキーにがんをつけるみたいな感じで、めちゃくちゃ鋭い眼光で私にがんをつけながら、口調だけは丁寧にそう言ってお辞儀をした。
「あ、あの、どうも、私はルイーズ。お世話になります」と私はしどろもどろになっていった。
「タチアナ、彼女を部屋に案内してくれ」
「かしこまりました」
私は目つきの悪い体重100kgのメイドに部屋に案内された。
そこはとても豪華で清潔な部屋だった。
「わあ、素敵な部屋ね」
「それでは失礼いたします」とタチアナはいい、やっぱり鋭い目つきで私にがんをつけてから出て行った。
「私、あのメイドさんを怒らせるようなことでもしたのかしら?」
部屋の中を色々見たり、ベッドの寝心地を確かめたりしていると、ドアにノックの音が鳴った。
「はい」と返事をする。
ドアを開けて顔を見せたのは、今度は初老の執事っぽい人だった。
「わたくしは執事のフレデリックでございます。食事の用意ができましたのでおよびにまいりました」
この人は穏やかな感じだったから私はほっとした。
フレデリックとともに食堂に赴いた。
食堂には長いテーブルがあり、そこにはすでにリチャードが腰かけていた。
「どうだい? 部屋は気に入った?」
「とっても」と私は答えた。
テーブルに座ると、メイドのタチアナと執事のフレデリックが奥から料理を運んできた。
「うちのシェフは腕がいいんだ。遠慮せずに好きなだけ食べてくれ」
「ありがとう。私実はお腹ぺっこぺこだったの」
料理はとてもおいしかった。
「おいしい!」
「だろ? あとでシェフを紹介するよ」
食べ終わるとリチャードがタチアナに命じた。
「タチアナ、バルザックを呼んできてくれ」
「かしこまりました」
彼女は太っているくせに足音ひとつ立てない軽い身のこなしでキッチンへいき、バルザックなるシェフを連れてきた。
そのシェフを見て私は度肝を抜かされた。
身長が2mを超すと思われる大男だったのだ。しかもその顔はゴリラに酷似している。
「ゴ、ゴリラ・・・」
「誰がゴリラだバカ野郎! 俺は人間だあああああ!」
「あひいいいいい、ごめんなさいいいいいい!」
「ルイーズ、こいつがシェフのバルザックだ。顔は悪いが腕は一流なんだ」
「なんだリチャード、そんなことを言うためにわざわざ俺を呼びやがったのか! 俺は忙しいんだ! つまらんことで呼ぶな!」
シェフのバルザックは主人であるリチャードに対しても横柄な態度だ。しかし当のリチャードはぜんぜん気にしてない様子でニコニコしている。
「あ、あのう、すごくおいしかったです」と私は蚊の鳴くような声で言った。
「おいしかっただと?!」とバルザックは私をぎろりとにらんだ。そして、窓ガラスが割れるんじゃないかと思うような大声でこう言ったのだ。「俺の料理がうまいのは当たり前だバカやろおおおおおおおお!」と。
私は危うく失神しかけた。鼓膜がどうにかなってしまうかと思った。
彼はのっしのっしと肩を怒らせて厨房に帰って行った。
「私、あの人を怒らせちゃったのかな?」
「なあに、あいつはあれが通常運転なんだ。むしろ今日は機嫌がいいぐらいだったぞ」
「あれで機嫌がいいって・・・じゃあ機嫌が悪いときはどうなるの?」
寝室に戻ってベッドに入ってから今日一日に起こったことを反芻した。
実にいろんなことが起こった。
婚約破棄されて、実家から追放され、リチャードと会って、彼の家にやってきた。そしてかなり個性的な使用人の人たちと会った。
タチアナは太っていて目つきが悪いし、バルザックは大男でゴリラ顔、しかもすぐ怒鳴る。そしてリチャードはひょうひょうとしていて何を考えているのかよくわからない。ゆいいつ執事のフレデリックさんだけはまともみたいだった。
そんなことを考えているうちにいつしか私は眠りに落ちたのだ。
×××
リチャードの家に来てから1週間が過ぎた。
人は慣れる生き物だって、いつか聞いたことがあるけど、本当にその通りだ。私はこの家の個性的な人たちに慣れだしていた。
メイドのタチアナは相変わらず目つきが悪いが、それは別に何か気に入らないことがあるからというわけではなく、彼女はもともとそういう眼付なのだ。癖みたいなものである。それに、彼女のメイドとしての能力は超一流だった。彼女が掃除したあとにはちり一つ落ちてないんじゃないかと思えるほどだった。
シェフのバルザックは、最初に会ったときには度肝を抜かされたけど、話してみると案外いい人だということが分かった。口は悪いけど、根はやさしい、江戸っ子みたいな感じである。人情があるって感じだ。リチャードの話によると涙もろいらしい。あの顔で泣いているのを想像すると笑いを禁じ得ない。
執事のフレデリックさんは変わらず優しかった。物腰柔らかで気遣いができて、まさに執事の鏡と言っても過言ではない。
リチャードは、やっぱりよくわからない人だった。彼は一日中ぶらぶらしていて、仕事をしている形跡が全くない。にもかかわらずお金はたくさん持っている。お屋敷は大豪邸だし、おいてある家具や絵画もとても豪華なものばかりだ。
いったい何をやってお金を稼いでいるのだろう?
裏で違法なことでもやっているのか?
あまりにも気になったので本人に直接聞いてみた。
「ねえリチャード、あなたは全然仕事をしている形跡がないけど、どんな仕事をしてるの?」
リチャードはきょとんとした顔で私の顔を眺め、
「仕事なんてしてないよ。僕は根っからの遊び人なんだ」
「だったらおかしいじゃない。このお屋敷や家具や、使用人の人たちを養うお金はどこから来るっていうの? 親の遺産か何か? 超高額の宝くじが当たったとか」
「いや、僕の親は僕が幼いころにふたりとも死んでる。僕は施設で育ったんだ。親は貧しい農家だったから遺産はない。宝くじが当たったわけでもない」
「じゃあどうやってお金を稼いでるの?」
「それは、まあ、過去の栄光さ」
「過去の栄光?」
「その話はもういいじゃないか。僕は過去にとらわれない性格なんだ」
それ以上聞き出すことはできなかった。
しかしリチャードは過去に何かをやって、そのおかげで巨万の富を手に入れたらしい。一生お金に困らないぐらいの、とんでもない金額のお金だ。
リチャードはまだ20代だ。と言うことはここ数年でそのお金を手に入れたことになる。
彼がどうやって大金を手に入れたのか、私は想像することすらできなかった。
×××
そんなある日、私は街で元婚約者であるレオナルドと遭遇した。
彼は私を発見すると、フリスビーを追いかける犬のごとく、すごい勢いで私に走ってきた。
「ルイーズ! おまえ、この1週間いったいどこに行ってたんだ! 俺は血眼になってお前を探していたんだぞ!」
「え? なんであなたが私を探すの? 婚約破棄したくせに」
「そのことだ。俺が勝手にお前との婚約を解消したことで、国王であるおやじから大目玉をくわされたんだ。おまえのとこの公爵家と良好な関係を築きたいとおやじは思っているらしい。それで、是が非でもお前との仲を直し、婚約を復活させろって言われたんだ」
「いまさらそんなこと言われても・・・」
「なんだ? 婚約を復活してやるんだぞ。うれしくないのか?」と彼は私の顔を覗き込む。
「私、やっぱりもうあなたとは結婚できない」
「なんだと! 勝手なこと言ってんじゃねえ! 婚約を復活させねえと俺がやばい立場に立たされるんだ!」
「そんなこと言われたって知らないよ。だいいち一方的に婚約破棄してきたのはあなたの方でしょ」
「うるさい、だまれ、のうがきはいいんだ。俺と一緒に気やがれ、このあばずれが!」
「はなして、私の腕を掴まないで!」
「おとなしくしろ! ぶんなぐるぞ! 俺だって別にお前なんかとけっこんしたいわけじゃねえ。そうしないとおやじがうるせえだけだ」
その時、メイドのタチアナがどこからともなくあらわれて、私の腕をつかんでいるレオナルドの首筋に忍者のくないを突き付けた。
「その手を放してください」
「な、なんだお前は! どこから現れやがったんだ? まったく気配を感じなかったぞ!」
「私はルイーズ様のボディーガードです。その手を離さなければ殺します」
「な、ななな、なんだと! 貴様、だれにものを言っているかわかっているのか? 俺は王太子だぞ!」
「そんなことは百も承知です。王太子レオナルド殿下。それでも私はルイーズ様に害をなすものは何人たりとも許すことはできないのです」
「くそが! いかれてやがるのか? 俺に逆らうってことは国王に逆らうってことなんだぞ!」と言いながらもレオナルドは私の手を離した。
「おぼえてろ」とありがちな捨て台詞を吐いてレオナルドは去っていった。
「ありがとうタチアナ」
「あなたを守れとのリチャード様からの命令です」
「あなたたち、王家に逆らうことが怖くないの?」
私がそう尋ねると目つきの悪いタチアナの口の端がわずかに上がった。笑っているように見えなくもない。
「リチャード様は、王家よりも上の存在です」
「ええええ! 王家より上って?! そんなのかみさまぐらいじゃん!」
ますますリチャードの正体が謎につつまれていく。
×××
「いい知らせと悪い知らせがある。どっちから聞きたい?」
タチアナとともにお屋敷に帰ると、開口一番でリチャードはそう言ったのだ。
「じゃあ悪い知らせから」
「王家が僕に宣戦布告してきた。正確には王太子が、だがな。そしていい知らせの方は・・・」
「ええ! ちょ、ちょっと待ってよ! 王家が宣戦布告って、それ、とんでもないことだよ」
「なあに、大したことはないさ。それよりもいい知らせの方を聞きたくないのか?」
「それどころじゃないよ。大変! どうしようどうしよう! 騎士団がこのお屋敷に攻め込んでくるかもしれないわよ!」
「落ち着けルイーズ。たとえ騎士団が攻めてきたって平気だ」
「平気なわけないでしょ! 私たちみんな殺されちゃうわ」
「そんなことよりもいい知らせの方を聞いてくれ。僕は君にプロポーズする」
「はあ? プ、プロポーズ?」
「そうだ。僕は君が気に入ったんだ。君と一緒に食事したり散歩したり、おしゃべりをしたりすると、とても心が落ち着く。僕にとって君は心のオアシスみたいなものだ。どうか僕と結婚してくれないか?」
「ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待ってよ! それはすごくうれしいことなんだけど、それよりも今は差し迫った問題が・・・」
「答えを聞かせてほしい。僕と結婚してくれるね?」
じっと私を見つめる彼の目はまるで宝石のようにキラキラ輝いていた。
「はい」と私は思わず答えていた。
彼は破顔し、まるで子供みたいに無邪気にほほ笑んだ。その顔はとてもかわいくて私は胸がどきんとなったんだ。
そのときタチアナがやってきて報告した。
「リチャード様、敵が来ました」
「来たか」
窓の外を見ると、お屋敷の周りには騎士団がたくさんいて完全に包囲されていた。
「ど、どどどど、どうしよう!」
「国王は今外国に遠征に出ているはずだ。おそらく国王がいないのをいいことに、王太子のレオナルドが勝手に騎士団を動かしているのだろう」
「客が気やがったみてえだな」と、両手に包丁を持った大男のバルザックがキッチンからやってきた。その顔はとても活き活きとしていて輝いていた。まるでこれからとても楽しいことをやるみたいな感じだ。
「いかがなさいますか、リチャード様」とタチアナが尋ねる。
「もち、戦うさ」
「御意」とこたえるとタチアナはメイド服を脱ぎ棄てた。その下からは黒い忍者衣装が現れた。
「え? 忍者?」
「そう、タチアナは女忍者のくのいちなのさ」とリチャードが開設する。
そういえば太っている割に妙に軽い身のこなしとか、決して足音を立てない歩き方とか、忍者っぽい要素はあった。
「血が騒ぐぜ。久しぶりにいっちょ暴れるか」とバルザック。
「10年ぶりですね」と言ったのは執事のフレデリックさんだ。
彼はいつの間にかハリーポッターみたいな黒いローブを着て手に杖を持っていた。そういえば丸い眼鏡もハリーっぽい。
「フレデリックさん、その恰好は?」と私は尋ねる。
「じつはわたくしは魔術師なのです」
驚きの連続で私は目を白黒させる。
「それじゃあ俺もこいつを使うか」とバルザックは手に持っていた包丁をポイと投げ捨て、壁にかかっていた全長2mもある特大剣を手に取った。
「バ、バルザックまで!」
「俺はシェフになる前は剣士だったんだ。狂戦士のバルザックってな」
タチアナが忍者でフレデリックさんが魔術師、そしてバルザックが剣士? 思考が追い付かない。
説明を求めようとリチャードの方を見ると、彼はどこから取り出したのか、青い鎧を身に着けていた。腰には剣を差している。
「そ、その恰好は?」
「ああ、きみにはまだ言ってなかったが、僕は勇者なんだ」
「勇者ああああ?」
「そこの写真を見ろよ」とバルザックが親指で壁にかかっている写真を示す。
そこには四人の冒険者が写っていた。
鎧を着て背中に大剣を背負い、そっぽをむいているのは若いころのバルザック。その横の黒いローブを着てほほ笑んでいるのはフレデリックさんだ。真ん中でピースサインをしているまだ幼さの残る少年はリチャードなのだろう。そしてもう一人の人物を見て私はさらに驚いた。忍者の黒装束を着た美しいスマートな女性が写っているのだが・・・
「も、もしかしてこのスマートな美女って・・・」
「私でございます」とタチアナがぎろりとがんをつけてくる。
「これってつまり、あなたたちは冒険者だったってこと?」
「ただの冒険者じゃない。魔王討伐を果たした勇者パーティーさ。まあ、過去の栄光だけどな」とリチャードがはにかんで鼻の頭を指先で掻く。
10年前、この世界には魔王がいて、人間は魔王軍と戦っていた。その戦いに終止符を打ったのは、当時まだ少年と言ってもいいぐらいの年齢だった若き勇者とその仲間たちたっだのだ。彼らはたった四人で魔王城へ乗り込み、四天王を撃破して、とうとう魔王討伐を果たしたのだ。
人類を救ったその英雄がほかならぬリチャードであり、ここにいる三人の使用人たちだったのである。これでリチャードが大金を持っているわけも、王家にたいして恐れを抱かないのにも納得がいった。
「おいルイーズそこにいるんだろ?」と外から声がした。レオナルドの声だ。
私は窓を開けて顔を出す。青空の下に無数の騎士たちがいて、そのなかにレオナルドがいる。
「レオナルド、こんなことはやめて」
「お前が悪いんだぞ。俺の言う通りにしていればいいようなものを、逆らうからこうなったんだ。今からでも遅くはない。俺の嫁になれ」
私は横にいるリチャードを見た。リチャードは無言で私を見つめている。その眼に勇気をもらう。
私は意を決してこう言った。
「レオナルド、私は自分勝手なあなたなんて、だーいきらい! 絶対に結婚なんてしてやるもんですか!」
「なんだと! お前にはこの1000人の騎士たちが見えんのか? 俺が号令をかければこいつらはその屋敷に突入するんだぞ。お前たちは全員皆殺しになるんだぞ」
「うだうだ言ってねえでさっさと来いよ! 俺は暴れたいんだ!」とバルザックが窓の外に怒鳴る。
「こっちからもお前に忠告しておくぞ」とリチャードが言う。「僕は愛する人を守るためならなんだってするし、彼女を傷つけようとする者はどんな奴であろうが決して許さない。死ぬ覚悟があるならさっさと号令とやらをかけろよ。僕は逃げも隠れもしないぞ」
「馬鹿め! その屋敷にはたった5人しかいないってことはわかっているんだぞ。その数で1000人の騎士に叶うと思っているのか?」
「僕たちは5人でも、お前たちよりはるかに強い」
「そんなに死にたいならば望通りにしてやる。行け、お前たち! 突撃だ! 屋敷ごと破壊してあいつらをぶっ殺せ!」
騎士たちが一斉に攻めてきた。
戦いは一方的だった。フレデリックの火の玉1発で数十人が火だるまになり、バルザックの剣一振りで3・4人の騎士たちが胴体を切断されてむくろと化し、タチアナは音もなく相手の背後に忍び寄り、気づかれる前にその首を切り裂いた。リチャードはまるで散歩でもしているかのような軽い足取りで歩きながら、襲い掛かってくる敵をことごとく返り討ちにしていった。
あっという間にその辺は死屍累々の巷と化したのだ。
騎士団が負けそうになるとレオナルドは一目散に逃げて姿を消した。
しかし国王に無断で騎士団を動かし、おびただしい死者を出した責任を問われ、王になる資格をはく奪されて国外追放になった。
国王は人類の英雄であるリチャードに心から謝罪をし、リチャードはそれを許した。
私は、リチャードと結婚した。そして個性的な使用人たちと共に暮らしている。




