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犬だと思って拾ったら、どう見ても猫でした  作者: 櫻木サヱ
犬を拾った日

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2/4

雨の日に拾った犬

その日は、最悪だった。


 朝から天気予報は外れ、夕方になって突然の豪雨。

 傘を持っていなかった私は、コンビニまで全力疾走し、仕方なく高いビニール傘を買い、結局全身びしょ濡れになってアパートへ向かっていた。


 そんな帰り道だ。


 道端に置かれた、少し潰れた段ボール箱。

 中から、かすかな動く気配。


 私は足を止めた。


「……まさか」


 胸がざわつく。

 こういう展開、知っている。

 物語でも現実でも、運命はいつだってこういう形でやってくる。


 段ボール箱の中を覗き込むと、小さな生き物が丸くなって震えていた。


 濡れた毛。

 小さな体。

 頼りなさそうな背中。


「……犬だ」


 私は、即座にそう結論づけた。


 顔を上げたそいつは、細い目で私を見た。

 じっと、疑うような視線。

 短く、低く、「ニャ」と鳴いた。


 ……鳴き声の個体差だろう。


「こんな雨の中、ひとりで……」


 私は段ボールごと抱え上げた。

 腕の中の犬は、驚くほど軽かった。


(……え、人間?)


 腕の中の犬は、心の中でそう思った。


(しかも、距離感が近い)


 アパートに着き、タオルを取り出して体を拭いてやる。


「ほら、犬は濡れると風邪ひくからな」


 犬は無言でこちらを見つめている。

 目が合う。

 逸らされる。


(犬って、こんな扱い受けるんだっけ)


 私は気にしない。


「名前、どうしようかな。ポチ……うん、ポチだ」


 犬は、はっきりと嫌そうな顔をした。


 次の瞬間、軽やかに床を蹴り、テーブルの上に跳び乗る。


「あ、元気だな! 運動神経いい犬だ!」


(それ、完全に猫の跳躍力だからな)


 犬は心の中で静かに訂正した。


 こうして、

 犬だと思っている人間と、

 猫だと分かっている猫の、

 奇妙な共同生活が始まった。

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