Abandoned Night 3話
鳥の鳴き声で目が覚める。悪魔はいない。
やっぱり朝とか昼が苦手なんだ…。
そして私は昨日の続きを考える事にした。
昨日会った青年は、「君は」と言っていた…。他に何人かいるって事だろうか…。
何で、私が悪魔といる場所がバレたんだろうか…。
もし、他の人も場所が分る能力を持っていたら、私はまた攻撃されるかもしれない…。
そう思ったらすぐに行動しなければ…生きたくて私は逃げて来たんだから…だから…
動かなければやられてしまうかもしれない。
私は動こうとしたが、あまりこの街を知らないのでどこに行けば良いのか迷ってしまった。
「ねぇ、君、迷子…?」
横から声がしたので、振り向くとオレンジの瞳をした優しそうな少女が立っていた。
背丈は私より少し高いけど、同い年ぐらいに見える。
私が黙っていると、少女は慌てたように続けて言う。
「あっ、ご、ごめんね!何かキョロキョロしてたから…もしかしたらって思って声をかけたの…!そうじゃなかったら本当にごめんね!」
少女は慌てて去ろうとした。
「迷子…」
私はとっさに答えた。
「えっ…?」
「私…迷子。私はどこに行けばいいの?」
少女は不思議そうな顔をしていたが、私が持っている赤い石を見た瞬間ハッと息を呑んで、もしかして…と呟いた。
「その赤い石どうしたの?」
「これ…?これは知らないおばあちゃんに貰ったの。」
「そっか、迷子ちゃんはもしかして、私と同じ巻き込まれた子って事?」
私の頭は「?」で埋め尽くされた。
確か昨日会ったソラという青年にも似たような事を言われた気がする…。
「…多分」
「良かったぁ…私も同じ!あっ、自己紹介がまだだね!私はシオン!よろしくね。迷子ちゃんの名前は?」
「…分らない。名前呼ばれたこと無いから…。」
「うーんそっかぁ…。じゃあ今つけちゃおうよ!良い?」
「うん…良いよ。」
「そうだな…目が赤いから…あかちゃんは何か変だし…ああちゃん…あいちゃん…アイちゃん!そうだ!アイちゃんにしなよ!」
「アイちゃん…私の名前…」
「うん!素敵な名前だと思う!」
シオンと名乗る少女は優しく笑う。
そして思い出した様に「そうそう」と続けた。
「アイちゃんはどんな時に石を貰ったの?」
「…私?私は…家出をした真夜中に貰ったの。」
「家出?!なるほど家出したんだ…。小さいのに凄いね!」
小さいと言われた。確かに小さいけれど…。まぁいいや。
「私はね、小学校で虐められてて、その帰りに占い師さんに出会って、この石を持ってると君を救ってくれるよ。と言われてタダで貰ったんだけど、夜になると悪魔が現れて、その次の日から虐めてた人が次々死んで行ったんだよね…。そして悪魔に言われたの『お前の望みは叶った。これが私の力だ。お前の怒りが私を動かす。』って。怖いよね…。私気づかないうちに怒ってて…それでその力が人を殺していたなんて…。でもね、怒ってなければ何も起こらないんだ!だから最近は怒らない様にしているの!」
シオンと名乗る少女は怒りっぽいんだろうか…?
「ねぇ…さっき巻き込まれた側って言っていたけれど、巻き込まれた側ってどういう事…?」
シオンと名乗る少女は目を丸くした。でも優しく教えてくれた。
「あのね、この石を持っている人は悪魔と契約した人なの。そしてね、石は全部で7色あって石を持っている人と戦わないといけないんだ…。最後の一人になるまで戦わないといけないらしいの。でね、最後の一人になったら願いが一つ叶うんだって。で、巻き込まれた側って言うのは私とかアイちゃんみたいに知らずにこの戦いに参加している子の事!でも中には望んで悪魔と契約している子もいるらしいよって事なの…。」
「…そうなんだ。」
完全に理解したとは言えないけど何となく分った気がした。
シオンと名乗る少女は続けて言う。
「でも、可笑しいと思わない?人を殺すなんて良くないよ…。」
「…そうなの…?」
「そうだよ!だって人を殺したって何にも良い事なんてあるわけないよ…!人を殺して願いが叶ったとしても嬉しくないよ…。」
私はお母さんに何回か包丁を向けられた事がある。だからいつか殺されるのが当たり前だと思っていた。
今もその気持ちは変わらない。
だから何が可笑しくて、可笑しくないのか分からなかった。
「…そっか。」
私とシオンと名乗る少女は二人で歩きながら話していた。気づいたら山の上まで来ていた。
「あっ、気づいたらこんな所まで来ちゃったね…。アイちゃん、ここどこか分る?」
「…知らない。」
「ここはねビーナスブリッジって言うの!夜になると夜景が凄い綺麗なんだって!お母さんが教えてくれたの!」
もう夕暮れだ。少し疲れてきた。
それはシオンも同じようで風に身を任せているように見えた。
でもシオンはハッとして言う。
「いけない!もうこんな時間!早く隠れないと!二人で隠れたらすぐ見つかっちゃうから…アイちゃんごめん、私もう行くね!アイちゃんも自分で隠れる所、頑張って見つけてね!
あ、後、石だけは守ってね。悪魔と契約した限り、石が命の代わりなんだって。だから身体に攻撃されても痛みは感じないし死ぬ事はないけど、石が壊されたらすぐに死んじゃうんだって…!だから石だけは守ってね!」
と言って慌てたようにどこかへ行ってしまった。
私は何だかビーナスブリッジから見る夜景が気になったので少し暗くなるまで待ってみることにした。
みるみるうちに夜になってあちらこちらに光がついていく。
まるで星空の上に立っているみたいだ。
夜景を見ていると隣に烏頭の男いや私の悪魔が立っていた。
「…ねぇ、さっき私と年齢が近そうな女の子に会ってね、教えて貰ったの。貴方、悪魔なの?」
『昨日も言っただろ。それに、そうだとしたらどうする。叫んで逃げるのか?』
「…そんな事はしない。ただ気になっただけ。」
『そうか。そうだ私は悪魔だ。お前の願いを叶えるためにここにいる。』
願いなんてない。叶えたい事なんて今まで考える事すら許されなかったから…。
『何もないと思えるのは今のうちだ。いつか願いが出てくるだろうな。お前は人間なのだから。』
人間だから。そう言われても…。
やりたいことについて考えているとふと思い出した事があった。
「…ねぇ、さっきの女の子がね、契約とか言っていたんだけれど私と貴方は契約しているの…?」
『いや…していない。なぜなら契約には名前が必要だからだ。』
「そうなの…でも丁度良かった…私名前を付けて貰った所なの。これで契約できる?」
『出来るが、よく考えた方が良い。契約をすると悪魔の力を使えるようになり悪魔にだってなれる。それに最後の一人になれば、一つ願いが叶う。しかし、契約をすると二度と人間には戻れないぞ?それで良いのなら…契約をしてやろう。』
難しい事を言っている。
でも、人間を辞めたって辞めなくたって、私にやりたい事も、居場所なんて物も無いんだから…悪魔になった方がマシかもしれない。
「…うん。良いよ。私、石をくれたお婆ちゃんに言われた。約束を守れるか?って、多分この事だと思うから…契約しないとお婆ちゃん可哀想だし、私あなたと契約しても良いよ。…私の名前はアイ。アイって言うの。」
『そうか…承知した。アイ。私の名はマモン。強欲の悪魔だ。』
続く




